2008/02/21 

平吹 萌 (16)

 「理系離れ」これは最近の若者に見られる傾向として新聞などでよく取り上げられている問題である。

 私は小学生の頃から比較的、数学(算数)も理科も好きだったので、将来の進路選択では、理系に進もうと思っていた。しかし、実際に入学した高校では、理系教科は難しく、大学入試の事を考えると、断念すべきと考え、文系という結論をだした。これは、私のことだが、訪問した東京都立小石川高校の金澤副校長も同様に「理系は勉強面での負担が大学に入る前も後も大きい」と話していた。更にその他にも様々な理由によって『理系離れ』は起こるようだ。

 今この問題を解決する方法のひとつとして、文部科学省は SSH (スーパーサイエンスハイスクール)という制度を実施している。 SSH に指定されると国の援助によって、より充実した理系教育を行うことができる。

 その中のひとつである東京工業大附属科学技術高等学校の多胡先生と門馬先生は、「高校・中学で学んだ事が実際の生活の中で役に立つということを示すようにしている」とおっしゃっていた。このように、 SSH 指定校にはその学校独自のコンセプトがあるようだ。  

筑波大学附属駒場高校の仲里教諭
受験に役立たないような、実験も大学に入ってから「あのときやっておいてよかった」という生徒が多いそうだ

 教科書通りの学習だけでなく、発展的な内容や、実験を多く取り入れるというのも SSH 校に共通している。筑波大学附属駒場高等学校の仲里先生は「実験を多く取り入れた結果、生徒が科学に興味を持つようになった」と話していた。

 教育現場以外でも「理系離れ」という現状を少しでも変えようとしている人がいる。それが、『理系の地位を向上させる会』を発足した坂井崇俊さんである。坂井さんは「理系に進んでからの現実の厳しさを実際に経験したので、その時に感じた不満を改善しようとこの会を発足しました。活動の目的は、理系の地位を向上させる事によって日本に活力を与え、日本がアイデンティティを持った国になる手助けをすることです」と話していた。

 また、文部科学省は平成 19 年度より、『理数系教員指導力向上研修事業』という取り組みの実施を始めた。これは全教科を一人で教える小学生への指導方法を見直していく取り組みである。

 このように、大人や指導者を変えることにより、理系を学ばせる現状が少しでも改善すれば、それにあわせて今まで理系を断念していた若者も興味や意欲を持つようになるだろう。また、文系出身の大人たちが少しでも理系に対する知識を得るようになれば、次の世代に理系の魅力を伝える事が出来るようになるだろう。そうすれば自然に世の中も変わっていくのではないかと思う。

 このように若者の問題は大人の問題でもある。次の世代を担う私達にどのようなバトンを渡すかは大人にかかっているのだ。


関連記事:座談会「若者の理系離れ