高橋優香 (16)
昨年、ヤフー株式会社が新しいプロジェクト「さわれる検索」を立ち上げた。検索がさわれるとはどのようなことなのかを調べてみた。
「さわれる検索」は3Dプリンターとインターネットを組み合わせた構造になっていて、まず音声入力でキーワードを検索し、3Dデータベースにアクセス、最後に3Dデータをプリントアウト(立体化)するという手順で機能する。ヤフーはこの「さわれる検索」を筑波大学に寄贈した。
実際に設置されている筑波大学附属視覚特別支援学校を訪問し、高校三年生の大島康宏さんに話を聞いた。大島さんは目が不自由だが、「さわれる検索」によって「想像していなかったものを手で触ることができ、形を認識しやすくなった」と語る。今までは立体の模型を購入したり、先生が手作りで作っていたのだが、「さわれる検索」の開発により実物の模型を機械で作ることが可能になった。動物の模型など立体のものが簡単に出てくるのは画期的で、形を理解する手間が以前と比べて短時間で可能になった。
しかし利点ばかりではない。作られたモノの手触りがすべて同じであることや縮尺が表示されないなど改善してほしい点はまだまだあるという。また、3Dデータで作れるバリエーションの数には限りがあり、検索物によっては例えば台風や空気などといった形では表せないものをプリントアウトすることができない場合がある。このような場合には、「データを必要としている生徒がいます」といった通知がインターネットを介してヤフー側に伝わり、ヤフーがそのデータをYahoo!のネット上で募集する作業が行われる。こどもたちは「さわれる検索」のモニターの役割も果たしていると言える。
さわれる検索の開発者でヤフー株式会社マーケティングソリューションカンパニーのクリエーティブマネージャーである内田伸哉氏は、「目の不自由なこどもたちに検索結果を音声で表すことができないかと思い始め、最終的に『さわれる検索」を作った」と言う。内田氏は事業の企画を立てる時に企画案を100~200個も考えるそうだ。なぜ「さわれる検索」のような新しい企画がたくさん浮かぶのかを尋ねると「失敗したものを改良して新しいものを作る行為を繰り返しているうちにたくさんの企画が生まれ、それらをかぶらないように整理していく。人が今までやったことがない方法で人を喜ばせ、世の中の人があっと驚くようなものを作ってみたい」と充実した表情で答えてくれた。
ヤフーのプロジェクトはすでにことし3月で終了したが、筑波大学附属視覚特別支援学校の星祐子副校長によると、「さわれる検索」はこどもたちの声によってその後も進化し続けている。受け継いだのは文部科学省委託事業の「支援機器等教材を活用した指導方法充実事業」だ。今年度と来年度にわたって「さわれる検索」システムに入っているデータと、こどもたちが欲しがっているデータをデータベース化することを計画している。星副校長は「さわれる検索」について、「いろいろな取り組みの延長線上として「さわれる検索」が存在するのであり、いきなり出てきたわけではない」と語る。インターネット企業、検索技術者、プリンター設計者、大学の研究者、視覚障害教育の先生、ユーザーであるこどもたちが様々なアイデアを出し合った結果ではないだろうか。「さわれる検索」をもとに、より改善した装置が普及し、小さなこどもでも使えるような実用的な支援マシンが増えてほしいと願う。