2005/12/17 記者:三崎令日奈(18歳)

 毎月発売日に書店に積み上げられる数々の女性誌。それらの表紙に躍る数々のキャッチフレーズ「めちゃカワ」「外資系リーナの一週間」「聖夜のおねだリスト」・・・。女性雑誌業界は近年さらに競争が激しくなり、厳しい女性の目で選ばれ、「愛読書」となる。母、娘へと長く続く雑誌もあれば、新たな読者層をターゲットに最近創刊されたものも多い。書店の女性雑誌のコーナーは現代の女性の姿を映しているのかもしれない。

 そんな女性誌コーナーの雑誌を見ていて疑問に思うことがあった。英語圏の雑誌がファッションだけでなく女性の内面やリアルライフ、社会問題などシリアスな内容を取り入れているのに対し、日本の女性誌が取り上げるのは外見、つまりファッションとメイクだけである。読んでいると「~しなきゃいけない」「~にならなきゃいけない」といった焦燥感にかられることがあるのも日本の女性誌の特徴であると感じた。この内容で、私たち若い世代に悪い影響はないのだろうか?ティーン誌を中心に取材をした。

 中学生のごく大衆的な女の子を対象にしたティーン雑誌「ピチレモン」(学習研究社)。中学生雑誌ながら中学生向けブランド物を載せているこの雑誌を見た当初は少し違和感を覚えた。しかし実際に白井和成編集長( 39 )の話を聞いてみると、おしゃれ、友達関係、恋愛すべてにおいて多感な女子中学生に寄り添うようなこの雑誌の姿勢を感じた。

 白井氏は毎月一回読者の相談に電話で応じている。そこで昔と違うと感じることは、今は相談の内容が通年友達づきあいの関連であること。昔は4~6月はどうクラスに溶け込むかで、クラスに馴染む時期を過ぎてからは恋愛相談、という傾向にあった。

 白井氏は「今の子はコミュニケーションが下手。相手の言いたいことも理解しつつ自分の言いたいことも言える子になって欲しい」という願いを、読者のおかしくて笑えるネタを載せるモノクロページに託している。「笑われたけど、まぁいいや、楽しくいこう」というような、うまい付き合い方の基本を入れるようにしているという。

 国際関係、環境問題に関することも学研の方針のもと、記事を載せたことがある。反応はファッションページに比べて明らかに少ない。しかし、白井氏は「100人のうちの10人にでも反応してくる人がいたらそれでいい」という。「アンケートで、読者に特集ごとに A~D の評価をつけてもらう。ファッションは100人中60人に A がもらえて成功。でも国際関係などシリアスなページは30人もらえたら大成功」。これからも時々載せていく予定だ。

 成長期の子どもの体に悪いためダイエットの記事は一切載せない、モデルは黒髪でピアスは厳禁、読んで悲しくなったり、人をからかうような記事は載せない、下品な内容を載せない、などさまざまなことに留意して雑誌を作り、中学生の女の子のお財布を管理する母親に支持されている。少し派手にも見える雑誌の外見から想像しにくい、読者によりそう暖かい雰囲気を感じた。

 「ランドセルを持たなくなった子から制服を卒業するまでの子」を対象とするティーン雑誌の王道「セブンティーン」。高橋あぐり編集長に話を聞いた。英語圏のティーン誌「ティーンヴォーグ」「ティーンコスモ」にある人種差別や健康問題のようなシリアスな記事が少ない理由について、「アメリカとは社会的背景が違う。例えばドラッグに悩むティーンが多いアメリカではそういう記事を載せなくてはならないと考えるだろう」「欧米の女の子はジーンズと T シャツでとおしているのに対し、日本の女の子はファッションにとても関心がある。年代は同じでも日本と欧米とでは興味が違う」と説明した。

 「セブンティーン」ではシリアスな記事を全然載せていないわけではない。 イラク戦争の現地で、読者と同年代のイラクの女の子たちを取材した記事を掲載したこともある。「シリアスだからこそ掲載する難しさもあるが、今後 も折りにふれて載せていきたいと考えている」と高橋編集長は語った。

 この他に「 Cawaii 」編集部にも話を聞いた。3つの日本の代表的なティーン誌を取材して印象に残ったのは、編集長など編集に携わる人のティーンを思う気持ちがきちんとティーンへ伝わっているのだろうかという疑問だった。「外見がよくなくては」「ブランドを持たなくては」といった間違ったメッセージとして伝わっていないだろうか。

 今年の9月号で30周年を迎えた「伝統」ある雑誌「 JJ 」。篠原恒木編集長( 45 )は、ファッション誌の中にシリアスなテーマの記事を載せることについて「日本の雑誌に与えられた課題でしょうね」と言う。そういった記事を今の「 JJ 」誌面に載せたら、あまりにもほかのファッションページとバランスがとれない。また読者にもそういった記事をしっかり受け止め、自分で考える基盤があるのかどうか、という。

 また、「 JJ 」は「おしゃれなこと以外は載せない」というポリシーにそって毎月特集を組んでいる。たとえば、それは「着まわし術」で一枚のシャツをどう着まわすか紹介するのではなく、5通り着まわすくらいなら5枚シャツを買えばよい、というスタンスなのだという。「 JJ 」が対象としているのは、あくまで「良い家庭のお嬢様」。おしゃれで、リッチなものを提供すること。そこにシリアスな記事が入る隙間はないのかもしれない。

 大盛況に見える日本の若い女性向け雑誌業界。しかしそこに二つの疑問が浮かびがる。一つはファッションページばかりが重視され、内面より外見といった浅はかな内容になっていないだろうかということ。もう一つは「肌の色は白」「目は大きいほうがいい」「幸せはお金持ちと結婚すること」といったひとつの価値観に縛られてはいないだろうかという疑問だ。「私は私」と日本の女性が自信を持って胸をはって街を歩ける日は来るのだろうか。