Gap Year ~経験の大切さ~
2008/03/05 畔田 涼 (17)
Gap Year (ギャップ・イヤー)とは大学への入学が決まっている学生が、1年程度入学を延期することをいい、その間にボランティアや職業体験、旅行などを通じて社会的な見解を広げる制度である。この制度はイギリスで1990年代から普及し、ウィリアム、ハリーの両王子も Gap Year を経験している。現在イギリスでは約3分の1の学生がなんらかの形で経験を積むため入学を延期している。
Gap Year のような制度が、どうしたら日本で広まるのだろうか。これには、日本とイギリスの教育制度や就職制度の違いが深くかかわっているようだ。
過去に Gap Year を利用して、大学入学前に来日し、ケアスタッフとして働いた経験のある Anna Pinsky さんと大学卒業後に日本からイギリスへ行き、ボランティアとして活動した経験のある石川桃子さんにお話を伺った。
「イギリスでは大学側が入学を延期することを認めているし、就職の時も Gap Year を経験した人は自己解決能力が備わっているとして評価される」と語るのは Anna Pinsky さんだ。
一方で石川さんは「日本の現状で、この制度を活用することは難しいと思う」という。
その主な理由は、日本の大学は入学を待ってくれないので Gap Year に参加する場合は休学しなくてはならないこと。もう一つは、未だに日本では多くの場合、就職の際に新卒が有利であること。日本の大学や企業の理解が得られないなかで、参加することにリスクを感じる学生も多いのではないだろうか。
「ケアスタッフとして働いたことで違う人の立場にたてるようになったし、イギリスに帰国してからも、学ぼうという意識が高まり、有意義な大学生活を送れた」という Anna Pinsky さん。
「他国から派遣された人たちや現地の人など、いろいろな人々と知り合えた。人と関わる仕事がしたいと気づいた」という石川さん。両者のこのような発言からも、 Gap Year が意味あるものであることがうかがえる。
日本の近状をみても AO 入試や中途採用など、その人の今までの経験を重視するような傾向になりつつある。学業を極めるのも良いかもしれないが、経験を積むことで見えてくることがあると思う。
大学全入時代を迎えるといわれる日本。「とりあえず大学に行く」、そんな学生が増えていくのではないだろうか。これからの日本には Gap Year のような制度を利用して、大学入学前にたくさんの経験を積み、大学で何をすべきかを改めて考える期間が必要だと思う。