2008年5月21日~24日、神戸市で「子ども環境サミット in KOBE」が開催された。これは民間主導型のG8環境大臣会合関連事業で、日本を含む21カ国から子どもたちが集まり、環境問題について意見を交わし未来へのメッセージを世界へと発信しようというものだ。
このサミットには、ブリティッシュ・カウンシルが選んだ「国際気候チャンピオン」(日本を含む13カ国から選んだ高校生39名)と日本国内から選んだ「気候チャンピオン」(小学生から高校生たち7名)も参加した。国際気候チャンピオたちは、こ

▲英国環境大臣との会談

の「子ども環境サミット」への参加に先立ち、ロンドンで開かれた国際気候チャンピオン会議に出席し、各国の気候変動の問題やそれへの取り組み・改善方法などについて意見を出し合った。そこで出た意見を草案とし、世界の子どもたちからの投票を経て、「神戸チャレンジ」と題した「提言」がこの「子ども環境サミットin KOBE」でまとめられた。国際気候チャンピオンは「神戸チャレンジ」を、ヒラリー・ベン英国環境大臣に手渡した。
このサミットを、日本の気候チャンピオンでもあった2名を含むCE記者4名が取材した。

子ども環境サミット in KOBE」に参加して
2008/7/13                 寺浦 優(14歳)

 サミットには、世界21カ国の小学生から高校生までの幅広い年代の人たちが参加していました。ここに、私は日本の「気候チャンピオン」の一人として参加し、日本の気候チャンピオンたちの意見を代表して発表しました。各国からの参加者の話を聞き、多くの刺激も受けました。開会式では、ツバルを取材した女優の藤原紀香さんの話のほか、ツバルの女の子アンジェラさんの話も直接聞くことができたり、貴重な体験をすることができました。その経験について報告します。

  
サミットでは、世界13カ国の「国際気候チャンピオン」が、国ごとに自国の環境問題の状況やチャンピオンたちの活動内容を、各々3分間にまとめたプレゼンテーションを行いました。私は日本のプレゼンを担当しました。日本のチャンピオンたちは、「日本人の環境問題に対する意識の低さと、それを解決するには自ら率先して活動しなくてはならない」という2つを強く訴えかけることにしました。

 昔から「MOTTAINAI」(もったいない)は日本特有の考えとして受け継がれてきました。しかし今、「MOTTAINAI」という考え方が国民の心の中から薄れているように感じます。これは、「日本人の環境問題に対する意識の低さ」につながっていると私たちは考えました。そして解決のためには、「マイバック・マイはし・マイボトル」の使用を呼びかけるのはもちろんのこと、小中学校への出張授業でこれからの未来を担う小中学生に気候変動の実態を伝え、一緒に活動してもらえるようにお願いしたり、「エコな商品」や「エコなサービス」の開発や提供を企業に働きかけたりしようと計画しています。

 3分という短い時間の中で、私たち「気候チャンピオン」の思いを全て入れるのはとても大変でした。前日も夜遅くまでかかって、「私たちの生活が便利になればなるほど気候変動や環境問題は悪化していく。しかし今私たちは改善に向けて動き出さなければいけない。今の私たちの行動は、私たちの未来、私たちの子どもの世代に直接影響する。意識改善を今すぐ始めることが必要だ」ということが一番大事だと確認し合いました。

 私の言葉で果たしてうまく伝えられるのか不安もありましたが、精一杯伝えたつもりです。プレゼンが終わった時の達成感と、このサミットでプレゼンできた喜びは忘れることができません。

 「子ども環境サミットin KOBE」に参加し、私には「国際気候チャンピオン」をはじめ世界に沢山の仲間がいると思うことができました。それは、海外にも自分たちと同じように出張授業を行ったり、友人に呼びかけている人たちが沢山いたからです。イタリアのチャンピオンは「今まで地球を汚してきたことに対して、私たちが責任ある行動を取っています」と発言していて、説得力のある言葉だと感じました。
こういった仲間が沢山いることは、これからの活動への大きな自信となりました。そして気候変動をグローバルに考えている彼らからは、「自分ももっと広い視野で考え行動しなくてはならない」と刺激を受けました。

 私がこのサミットに参加して最も忘れられないことの一つが、ツバルのアンジェラさんの次の言葉でした。「私はツバルが大好きです。だから沈まないと信じています」。家族が大好きだから、島が大好きだから、沈むと思いたくないという、アンジェラさんの素直な気持ちは、私の心に響いています。こんなに島を愛しているのに生活できなくなってしまうかもしれないということには、憤りを感じました。今自分に出来ることを考え、何の罪もないツバルの人たちを少しでも助けたいと、心に誓いました。  私たち「気候チャンピオン」のスローガンは「OUR CRIMATE, OUR FUTURE, OUR VOICE」(私たちの気候、未来、声)、そして「SAVE OUR PLANET」(私たちの惑星を救え)です。私は、このサミットが開催されたことで、私たちの未来そして地球を守っていくことができると信じています。

「私たちの気候・未来・声」~気候変動を考える~
2008/7/13                 佐藤 美里菜(16歳)

▲中国の気候チャンピオンに取材

「子ども環境サミット in KOBE」が開催され、5月24日には神戸芸術センターで閉会式が行われた。私はその閉会式に参加し、そこでG8環境大臣会議への提言「神戸チャレンジ」が発表されるのを見ると同時に、気候変動について考える子ども達に取材を行った。

◇              ◇  

 現在、英国や中国の一部では洪水、中国の北京、ブラジルのサンパウロなどの都市では大気汚染、メキシコ、ロシアでは水質汚染、というように、気候変動は世界的な規模で深刻となっている。そうした気候変動について、世界の約40名の子どもたちが話し合って改善策を練り、それを子どもたちから大人へのメッセージである「神戸チャレンジ」として、G8国の環境大臣に提言した。

 神戸チャレンジの草案は3月にロンドンで行われた「国際気候チャンピオン会議」において三つ決められた。それを、ブリティッシュ・カウンシルのWebサイトを通じて行った世界の人からの投票により、一つに決定した。三つの草案に共通しているのは「気候変動に関する教育を」というものだった。

 日本で気候変動に関する授業などを行っているところは少ないようだが、英国、南アフリカ、カナダ、中国(北京)ではすでに教育制度に導入されているという。

英国の気候チャンピオン、ステファニー・リンチさん(18)によると、英国では11-14歳の授業に「気候変動問題」を取り入れているそうだ。南アフリカのザネル・ヴァン・ジルさん(17)によると、政府が作成した「ライフ・オリエンテーション」というプログラムがあり、彼女の学校はそのプログラムで、アル・ゴアの映画『不都合な真実』を観て、教育を受けているそうだ。また大学の建築学や理工学では環境に良いビルや家をつくるよう教育されているという。中国のチャンピオンである丁英瀚くんの通う北京の公立高校では「クライメート・クール・プログラム」という週1回の気候変動に関する授業があるそうだ。選択授業ではあるが、彼は「必須科目とするべきであり、特に低学年の授業に取り入れるべきだ」と話す。

 しかし気候変動についての教育を導入したくても言語の違いがある国や識字率が低い国では難しい。公用語が11もあるインドのカラン・セガールくん(17)は、この問題について「本やインターネットを通してメッセージを伝えて理解する」「映画や歌、路上パフォーマンスによって多くの人々にメッセージを伝える」というアイディアもあると語り、言語が多くても教育することは決して不可能ではないことを伝えてくれた。ブラジルのギレム・ディ・シキィラ・パストレくん(17)は「識字率が低く、教育制度が必ずしも優れていない」と話すが、彼の学校では地理などの授業で気候変動について学んでいるようだ。

 私の通う高校では授業での教育はしていないが、古紙やブリックパックを回収しリサイクルしている。そういった実践的なことも含めて、もっと世界中で学校としての積極的な取り組みが必要だと思う。

 神戸チャレンジの中にもある「国際的排出権取引制度」については英国のヒラリー・ベン環境大臣と子どもたちが意見を交換する場面もあった。

  排出権取引制度(Cap & Trade)とは、国や企業ごとにCO2の排出枠を決定し、排出枠に余裕のある国・企業と排出枠を超えている国・企業が取引(トレード)する制度である。つまり、地球規模でのCO2排出量をコントロールしようということだ。

 大臣は「どの国が排出したCO2かを見分けるのは困難である」と話す。その現実に対して国際気候チャンピオンたちは「深刻な問題であるが、世界での認識を高め、世界規模でのCO2の排出を制限しなければならない」と語った。チャンピオンたちは「先進国はもっと途上国に対して技術や資金を提供するなどの支援をするべきだ」と考えている。

  私もこの問題のように世界規模の問題に関しては、「支え合う社会」を意識することによって少し解消されるのではないかと思う。

 いずれにせよ、子どもたちの力だけではこの問題を解決することは不可能である。チャンピオンたちは「大人は子どもたち以上に気候変動に対する認識を高めるべきであり、技術や資金などで世界規模の影響力をもつ大人が行動にでるべきである」「将来、直接影響を受ける僕らの声に耳をかたむけてほしい」と強く語った。

 今すぐ、大人が率先し気候変動について積極的に取り組むべきである。そして未来を生きる子どもたちは「自分たちの気候」「自分たちの未来」であることを強く意識し地球とうまく付き合う生活を送ることがとても重要だと思う。

  現代社会において、環境に優しい生活を送ることはそこまで難しいことではない。自分ができることを少しでも生活に取り入れてみてはどうだろうか。その努力は地球だけでなく、必ず自分にとってもプラスになると、私は思っている。

子どもたちから未来への提言~子ども環境サミット in KOBEに参加して~
2008/7/13                 宮澤 結(14歳)
 皆さんは「気候変動」についてどう考えているだろうか? おそらくこのような質問を突然投げかけられたらびっくりするだろう。また、「そんなの考えたことがないから分からない」という人も多いのではないだろうか。その答えを考えて行動していた子どもたちの思いが、「神戸チャレンジ」という形でG8国の環境大臣に伝えられた。その様子を取材し、参加した子どもたちの意見を聞いた。

▲インドの気候チャンピオンに取材

 様々な環境問題を子どもたちの視点で地球規模に見ていこうと、ブリティッシュ・カウンシルが主催して、3月にロンドンで「国際気候チャンピオン会議」が行われた。そこで話し合われた内容から「神戸チャレンジ」のための三つの草案が生まれた。そのうちの一つを、5月24日に神戸で開催されたG8環境大臣会議に提言するため、世界各国のブリティッシュ・カウンシルがウェブサイトを通して、世界の若者たちに投票を呼びかけ、23日までに17,000もの投票が寄せられた。
「子ども環境サミットin KOBE」では、神戸で再会した13カ国の国際気候チャンピオンと日本国内の気候チャンピオンとがその投票結果に基づいて話し合い、「神戸チャレンジ」の内容を次のように決め、G8の環境大臣会議に提言した。

気候変動対策に取り組むために、私たちは、その難しさを認め、責任を受け止め、一貫性をもって対応しなければなりません。
・すべての教育制度に気候変動を取り入れ、実用的に解決策を全社会に提示して下さい。
・厳しい国際的排出権取引制度を導入して、排出を制限してください。
・気候変動の避けられない影響によって受ける最悪の打撃のために、技術と資金を提供してください。

 この提言の中でも特に気候変動に関する教育を充実させることについては、多くの期待が寄せられているのを感じた。今回「神戸チャレンジ」を議会に提出したことを報告したヒラリー・ベン英国環境大臣は「より多くの人が教育を通して気候変動の問題を理解して政治を変えることができるから、教育は大切だ」と述べた。また、私たちの世代が将来、直接影響を受けるのだから、同年代の子どもたちに学校教育という形で理解してもらえば数年後に良くなっているだろう、と話す国際気候チャンピオンも多くいた。

「教育制度に気候変動を取り入れる」ということに関して、すでに実行している国の話も聞くことができた。カナダのメーガン・マックイーンさん(16)によるとカナダでは「エコ・スクール・プログラム」というのを設けて環境基準を設定し、電球を省エネタイプに変えたり、緑を植えたり、ゴミを減らすように努力しているそうだ。また南アフリカでは、文部省が作成した「ライフ・オリエンテーション」というプログラムがあり、エイズや自国の直面する問題について人々とどのようにコミュニケーションをとるのかを学校で学ぶという。南アフリカのザネル・ヴァン・ジルさん(17)の学校では、アル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』を見て環境について教育を受けているそうだ。

一方、気候変動についての教育を受けられない国の事情なども聞けた。都市部だろうと農村部であろうと、気候変動は人々に影響する問題であるのに、インドでは識字率が約50%と低いので学ぶことができない、とインドのカラン・ヤーくん(17)は言っていた。

 各国で問題になっている気候変動の被害についても聞いてみた。香港の陳旭培くんよると、内陸での砂漠化が進んでいて、都市部にも黄砂が飛んでくることが問題らしい。ブラジルのギレム・ディ・シキイラ・パストレくん(17)は、アマゾン川流域の森林伐採が問題になっていると言っていた。ザネル・ヴァン・ジルさんは、5000種もの南アフリカ固有の植物が気候変動の影響を受けていると言った。

ザネル・ヴァン・ジルさんは「私たちが大人になってからでは遅すぎるから大人たちには今、行動を起こしてほしい」と言っていたし、インドのカラン・セーガルさん(17)も大人たちの経験や資金が無ければ実行できないから、大人に協力してほしいと言っていた。この問題においては、世代を越えての協力が必要となってくるだろうし、やはり大人の力が必要だと思った。

各国の気候チャンピオンたちの話を聞いて印象的に思ったのは、どのチャンピオンもしっかりと自分の意見や考えを持ち、真剣に話してくれたことだ。取材前の私は正直、「他の人が頑張れば」と他人任せな思いが少しばかりあった。だからこそ気候変動について深く考えている気候チャンピオン達は輝いて見えたし、今までの自分の考え方が恥ずかしくなった。恐らく前の私のように考えている人は多いだろう。だが、この気候変動は、他の誰でもなく、私たちの世代の問題である。誰一人として知らん顔は出来ないし、世界が一丸となってこの問題に取り組む必要がある。サミットに参加してみて、「自分の出来ることは何があるのか」と考えてみた。冷房の設定温度を数℃上げてみるとか、電気をこまめに消すとかほんの小さなことでいい。今日から自分の出来ることを見つけて、地球をいたわっていこうと思う。そして自分が実行することで、自分の周りの人にもその考えかたを浸透させていきたい。

「子ども環境サミット in KOBE」に参加して
2008/7/13                 三崎 友衣奈(16歳)
 7月の北海道洞爺湖サミットに合わせ、5月17日~25日に開催された「子ども環境サミットin Kobe」では、国際気候チャンピオンたちによる活発なディスカッションが行われたほか、京都へ観光に行ったり、神戸祭りに参加したり、グループに分かれて企業訪問に行ったりと、日本の様子も見学した。また、このプログラムに対し多額の寄付をしてくれた女性との対話の時間もあったほか、日本人としての意識を改めて考えさせられる場面もあった。参加しての報告と感想をまとめた。

▲日本のチャンピオンによるプレゼンの様子

サミットでは、国際気候チャンピオンたちによるディスカッションが多く行なわれた。自分が自国の大臣になったつもりで国民にやってもらいたいことを考えたり、他国の国民に成り代わってその国にやってもらいたいことを話し合い、その国のチャンピオンに提案したりした。特に京都議定書に関しては盛り上がり、アメリカのチャンピオンが「国がやっていることと国民の意思とは大きな違いがある」と主張し、気候変動の問題に対する真剣な姿勢をアピールした場面もあった。

今回の「子ども環境サミット」の日本開催には、同サミットが企画したロンドンでの「国際気候チャンピオン会議」で話し合われた内容を「神戸チャレンジ」という形で「G8環境大臣会合」に提出するという目的があったため、その準備も進められた。主に、ロンドン会議で出された案を再確認し、内容をより深めるための話し合いが重ねられた。

チャンピオンたちがオープニングセレモニーに向けてプレゼンテーションを考えていたとき、スタッフから一人の女性が紹介された。この女性は、このサミットを企画し、多額の寄付をした人の一人だ。簡潔な紹介のあと、多くの質問がチャンピオンから飛び出した。「サミットを企画した動機は?」「どうして寄付しようと思ったの?」など、みな積極的に手を挙げて質問する。

 時間が押していた中で最後に「なぜ‘若者’を対象としたのか」という質問が出た。この質問に対して彼女は「直接影響が出る未来に生きる人たちでもある若者に考えてほしいから」と10代の若者への大きな期待を語った。

 サミットでは世界規模だけでなく、日本人としての意識を改めて考えさせられる機会もあった。ある夜、豆腐や漬物、刺身、すき焼きなどの日本料理が振る舞われたときのことだ。外国の料理とは全く違うため、豆腐の触感が気持ちが悪いから、また味付けが合わないからという理由で料理を残す人が多かった。そんな中、一人の外国人チャンピオンが友達の料理がほとんど手付かずのまま残してあったのを見て、「作った人に申し訳ない」と残りをつまんでいた。自分で身近にできる範囲のことを、自然に実行していた姿に感心した。

 「MOTTAINAI」(もったいない)という日本語は世界で広がっている、日本独自のものの言い表し方である。しかし現在、日本では一人が一日当たり平均約50gもの食べ残しを出しているという。古来の日本人の心持ちを受け継いだ「もったいない」を実践できる人でありたいと思った出来事だった。  世界中の同年代の若者と話し合う中で、気候変動についてだけでなく世界の中の日本を垣間見ることができたと思う。「MOTTAINAI」を発信する日本人として、未来をつくるティーンとして、この大きな問題に立ち向かおうと思う。気候変動は規則や条例によって改善される問題ではなく、一人一人が、将来を見据えていかに行動するかが大きく関わってくる。若者が、気候変動という将来に大きく関わってくる問題を敏感に感じ取っていくことができれば、世代が変わっていく中で違いが現れてくると信じている。

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