2010/11/05               堀 友紀(17)

 目標まであと 66 校。 全国高体連によると、高校女子サッカーチームの登録数は 330 校。男子は 3964 校で、男子の 10 分の1の登録数になることが女子サッカーの目標だという。

 今年の春の大会で高校女子サッカーのルール改正があり、だんだん男子サッカーに近付いてきたが、メジャースポーツでない女子サッカーは今後何を目指していくのかということに興味を待った。そこで財団法人日本サッカー協会中村修三・女子部部長と、全国高体連サッカー部女子部の役員である床爪克至・文京学院女子高等学校サッカー部監督に取材をした。

全国高体連の 床爪克至氏

 「なでしこジャパン」の愛称で一気に知名度を上げた女子サッカー日本代表は北京五輪で 4 位に入賞し、国際サッカー連盟( FIFA )ランキングは現在5位で、来年ドイツで行われる世界大会(ワールドカップ)では優勝を目指している。しかし、「女子のオリンピック競技で、日本が金メダルを取れる可能性がある競技」といわれている女子サッカーについてはあまり世間で知られていないのが現状だ。

 日本サッカー協会によると 2010 年 3 月現在の女子サッカー競技人口は、小学校が 14,705 人、中学生が 6,585 人、高校生が 8,367 人、一般が 7,005 人となっている。この数字からも見て取れるように、小学生から中学生になるとともに競技人口が半分も減っている。中村氏も、床爪氏も、「小学校時代は男子と女子が地元のクラブで一緒に競技しているのが、中学校に女子サッカー部がほとんどないために、サッカーをやめてしまう選手が多い」とその理由を挙げている。

 高体連では「中学校にサッカー部を!」をスローガンにあげている。床爪氏は「試合には高校から審判を出したり、試合会場の提供などを行っている。中学での部活の体制が整えば、中学に上がるときにサッカーをやめてしまう人も減少し、女子サッカー人口増加に大きく貢献する。女子サッカーの発展は「中学校の部活が鍵を握っている」と言う。

 女子サッカー人口の少ないもう一つの理由はハードの整備の問題だ。「サッカーコートはとても場所をとるため確保が難しいので、フットサルコートを使うことなどの策がとられている」と日本サッカー協会の中村氏は言う。

財団法人日本サッカー協会中村修三・女子部部長

 また、床爪氏によると、どの中学も1校だけでは練習に必要な人数が集まらないことや、指導者不足などの悩みがあるため、いくつかの学校のメンバーが集まって一つのチームを編成している。都内で拠点校となったのは区立第四砂町中学校で、9校から集まった 30 人の生徒で週2回の練習を行っているそうだ。このような学校が徐々に増え続けていくことで女子サッカー部のある中学校が増えていくのではないか。

 女子サッカーを広める動きとして、床爪氏によると、高校女子の公式戦を都内の「味の素スタジアム」など大きな会場で開催し、女子サッカーというものを多くの人に知ってもらう方法を高体連ではとっているそうだ。だが、このスタジアムの使用料はサブグランドのアミノバイタルフィールドで、1日 25 万円。女子高校生の1日の試合にかける金額としてはかなり高額だ。選手たちにとっては、すごく立派な会場でできるという喜びはあっても、このように多額な費用をかけて、こんなにも大きな期待と希望をこめて借りた試合会場だとは知るよしもない。

  女子サッカーをもっと知ってもらい、広めていきたいという熱意をもった監督たちが選手たちの知らないところで動いているのだ。女子サッカーが正式に認められなかった時代には監督たちが自ら費用をだしてやりくりしていたという。

床爪氏によると、高体連サッカー部 ( 女子 ) は平成 24 年からインターハイ競技になる。実現までに 13 年かかったそうだ。高校野球でいえば「甲子園大会」のように、インターハイに出場することで学校の名誉となり、その学校が知られるようになって、サッカーをしたいと思う人が集まり、サッカー人口が増えていくのだと床爪氏は言う。「強化は十分できている」と胸を張って言った。   「サッカーは、全世界で共通するコミュニケーションを取ることのできる、人と人とをつなげる遊び道具だ。それだけすごいスポーツなのだから、高校から始めた女子生徒は、周りの選手との実力差を気にするのではなく、とにかくサッカーの楽しさを知ってほしい」と床爪氏。そして「今、サッカーをしている女子選手には絶対にやめてほしくない」と中村氏。両氏とも女子サッカーの発展を強く願っている。