出席者:持丸朋子(16)、青野ななみ(17)、富沢咲天(16)、南雲満友(16 司会)
2011/07/25
東日本大震災という大ニュースに自ら接したCE記者4人が体験的ラウンドテーブル(RT)ディスカッションをしました。 |
司会:3月11日に起きた東日本大震災。津波の影響で東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機が浸水し、発電所としての機能を失いました。この影響で計画停電や節電などで私たちの生活が一変しただけでなく、イタリアでは原子力発電に関する是非を問う国民投票が行われたり、国内外で原子力発電の見直しや再生可能エネルギーによる発電が注目を集めています。今回は「次世代を担う私たちが考えるエネルギー」をテーマに話を進めていきます。まず、原子力発電について皆さんはどのように考えていますか?
ななみ:原子力発電はやはり発電コストが安く、私たちの生活を続けていくうえで欠かせないものだと思っています。
朋子:安価で安定した供給ができて、二酸化炭素の排出も少ないというメリットを持ちながら、今回の地震でもわかったように、安全でないというデメリットも持っているので、生活には必要なものですが危険なものだと思います。
咲天:事故が起きた時にとても危険で、後の処理にとてもお金がかかるし、廃棄物をどこに埋めるかとかいう問題もあるので、デメリットもすごく多いと思います。
満友:原子力発電は化石燃料と違って、発電の時にCO2を出さないという点でクリーンなエネルギーとして注目を集めてきましたが放射性物質に汚染されたものの廃棄や賠償金を含めるとコストは安いとは言えなくて危険だなと思いました。■安定供給か安全性か
司会:では原子力発電について、まず利点について聞きたいと思います。皆さんは原子力発電の利点についてどのように考えていますか?
ななみ:CO2を出さない、燃料が少しでいい。
満友:日本へウランを供給している国、例えばカナダとかオーストラリアも政情が安定しているから、安定して供給が期待できるのかなと思います。
司会:逆に今回の原発事故をきっかけに様々な欠点が露呈しました。
朋子:住民にきちんと原子力発電の危険性を伝えられていないまま、東電や国などの利益を求めることを優先して作って、このような事故が起きてしまったことが一番問題だと思います。
ななみ:問題点は大きく分けて二つあります。一つ目は高レベル放射性廃棄物の最終処分地が決まってないということで、これは永遠に地球上にあるということです。二つ目に軍事転用されるのではないかという危険性です。テロへの危険という面でもとても危険だと思います。
■高コストだった原発
咲天:日本は、原子力発電に依存しすぎていることが欠点だと思います。また放射性廃棄物の処理ももし地下深く埋めたとしてもまた地震が起きて、その放射性物質が出てきてしまうという危険もあるのでとても危ないと思います。
満友:自然エネルギー庁が2010年に調べたもので原子力発電は1キロワット当たり5~6円なのに対して、太陽光が49円という8倍とか9倍の数になってしまっているけれど、これは今回の事故で原発は賠償金とかの問題を入れると莫大なお金が必要だっていうことが、みんなに知れわたったのではないかなと思っています。
ななみ:依存しすぎという意見があったでのすが、現在私たちの国の原子力発電は発電エネルギーの約3割と言われていますよね。しかも今節電していると意外とできるんじゃないかという雰囲気があります。それでも私たちは原子力に本当に依存していると思いますか?
朋子:何年かして以前の生活に戻った時に、やっぱり今のままでは電力が足りなくて、もとの依存する形になってしまうと思います。
満友:自然エネルギーは現在発電エネルギー全体の1.1%しかなくて、もし原子力エネルギーが無くなってしまったら、私たちも今まで当たり前だと思っていたことができなくなるし、経済も低迷することになってしまうと思うので、やはり依存しているのかなと思います。
咲天:例えば太陽光発電だと曇りの日は発電量が少ないとか。でもそういうことは原子力発電にはないから、一番安定供給ができる原子力発電がいいという考えに依存してしまいそう。
■危険でも頼らざるを得ない?
司会:危険だとわかっているのに依存してしまうのは、原子力が一番安定的に供給できるからでしょうか?
ななみ:今確かに日本ではまだ1,1%かもしれないけれど、世界的に昨年の電力使用量の20%は再生可能エネルギーだったので、進んでないのは日本だけだと思う。
朋子:今までの日本は、国や一部の会社の利益を求めて原発を使っていて、私たちはそのデメリットを知らなくて、隠された部分を知らなかったので、原発に依存していったんだと思います。事故があって、この危険性がわかって、国民も危険なんじゃないかという意識を持ち始めたので、これからは依存しない方向に変わっていくのかもしれないと思います。
司会:今は原発は危険だとわかったけれど、それでも今までの生活をするにはどうしてもこの自然エネルギー利用が1.1%ではできないということで、結局は原発に頼らざるを得ないと思うんですけど、それについてどう思いますか?
朋子:原発をすべて廃止することは、経済とかいろんな面で無理かもしれないけれど、今の約3割を原発が担っているというのを変えて、他のものでも電力を供給できるようにすれば、原発の危険性も少なくなり、原発が少なくなっても他で補えるというふうになると思います。
■自然エネルギーに知恵を生かそう
司会:皆さんの身近なところで自然エネルギーを見かけたり、使用していたりするところはありますか?
咲天:私の卒業した小学校が太陽光発電を導入していて、それを小学生たちにどのような利点があるのかというのを教えていました。
朋子:各家庭でやるには大変かもしれないけれど、会社や学校などの大きなところがやるだけでもかなり違うのかなと思いました。
ななみ:新聞で読んだ話ですが、福岡では下水処理の過程で発生するガスを使っていたり、宮古島ではさとうきびのカスを使って発電に取り組んでいたり、地域の特産物を生かした取り組みというのもされているという話を聞いて、資源がないと言われている日本でも、様々なものを活用しくのはいいなと思いました。
司会:では具体的にどの再生可能エネルギーに注目していますか?
ななみ:今日本では太陽光発電装置の技術力が高くしかも電力の使い方の効率が良いと言われているので、やはり今普及しはじめている太陽光をこのまま使っていくべきだと思います。それに加えて波力や潮力を使った発電にも注目しています。日本は資源が無いと言われていたのに、島国でこんなにも海があるのだから波を使おうよって思います。
咲天:日本は火山がとても多い国なので、それを利用して地熱発電をどんどん進めていけば電気はけっこう作れるのじゃないかと思います。
満友:私は風力発電に注目しています。岩手県のある町では風力発電に適している土地がたくさんあって、町に15基設置されていて、全部合わせると一万世帯分をまかなえるということです。その土地に合った発電方法を進めていくことが一番いいと思います。
朋子:私は一番多くの人がやりやすい太陽光発電をメインに、それぞれの発電がある程度の割合を占めれば、どれかができなかった時にもそれぞれで補えるのでいろいろなやり方で発電をしていくのがいいと思います。
満友:岩手県のその町でもっと風力発電の設備を建てたいと言っているのですけど、風力を新しく設置して売電するには、送電網への接続を東北電力に認めてもらう必要があるそうです。それも40倍の倍率で抽選をしないといけないし、送電網と発電を同じ会社が持っているので、再生可能エネルギーが普及しない原因にもなっているのだと思います。
■競争で技術革新に期待
司会:その点に関して、今、発電会社と送電会社が同じために再生可能エネルギーを活用したくてもできないという現象がいろいろなところで起きているのですが、皆さんは発電会社と送電会社を別々にするべきだと思いますか? それとも運営に関して効率がいいから今のままの方がいいと思いますか?
ななみ:私は、理想は別々にすることだと思います。現在東京電力や関西電力などの電力会社が完全に独占市場で、競争相手もいないためにこのような事態になったというのが大きいと思います。
咲天:やはり競争相手がいると値段も安くなるし、技術もどんどん良くなっていって、よりいいものができると思います。
満友:別々にすることで再生可能エネルギーを取り入れたいと思っている自治体も動きやすくなるし。司会:自然エネルギーは安定供給が難しいのが欠点として挙げられています。
ななみ:それは現在自然エネルギーにあまり着目されていないからだと思います。自然エネルギーを増やそうということになって、予算が増えて競争が始まるとどんどん技術が革新していって、それによってより安定して発電できるようになると思います。
咲天:いろんなエネルギーの発電の方法を共存させながら、自然エネルギーがもっと発達していって、原子力発電がもういらないという方向性に持って行けば、「脱原発」というのが成功できると思うし、環境にも一番優しいと思います。
満友:二つを一緒に使っていけばお互いの悪いところを補っていけるし、原子力発電と自然エネルギーを両立していくという考え方も必要ではないかと思いました。
■節電を体験して
司会:節電をするという今の状態を続けた方がいいのか、それとも続けない方がいいのでしょうか。
朋子:日本では蓄電設備があまり普及していないので、電力はとっておくことができないから、結局は100%使っても60%でも同じで、100%までならば電力を使ってもいいと思うのですが、それを超えて供給に問題が出るのは良くないと思います。
司会:それは節電に対する取り組みを続けていかない方がいいということですか?
朋子:極端に節電をするのではなくて使用できる範囲では電力を使っていいと思う。例えば28度の設定はみんなが我慢すればいいことだからそこは節電をする、でも工場が止まって社会に影響が出るっていうのは困るのでそこは使って、それで100%のなかにおさめればいいと思います。
ななみ:私も極端に節電をすべきではないと思いますが、自然エネルギーに早急に切り替えて行くべきだと思っています。自然エネルギーによって新しく生まれる雇用が50万人であったり60万人であったり、また及ぼす経済的な効果というのが2030年までに64兆円と言われていて、私たちが思っているよりも自然エネルギーに変えていくことで利益は生まれるので、今の経済をどんどん活性化させていくためにも自然エネルギーに変えていくべきではないかと思います。
司会:原発のストレステストが今取り沙汰されていますが、新しいエネルギーと原子力発電をどのように活用していくべきだと思いますか?
咲天:段階的に原子力の量を減らしていって、逆に自然エネルギーを増やしていくようにすればいいと思います。
ななみ:自然エネルギーというのは1~2年では結果は出せないと思うので、長い目で見ていかなければいけないので、その間は火力であったり他のエネルギーにどんどん頼らなければいけないかと思います。でも私は日本人を本当に誇りに思っています。震災から1ヶ月もすれば百貨店やスーパーでは節電グッズが山ほど並んでいるのを見ていると日本だからこの光景を見られたので、秋になったらまた新しい何かが発明されるのではないかとひそかに期待しています。
■理想は自然エネルギーだが
司会:次世代を担う私たちはどのようなエネルギーをこれからの時代選択していくべきだと考えていますか?
ななみ:まず子供たちが安心して生きていける社会を作っていかなければいけないと思います。そのためには目に見えない放射能という、30年後もしくは近い将来体に大きな影響を及ぼしてしまう物質を流してしまうような発電方法はやめていかなければいけないと強く感じています。
朋子:私も原発は危険性などの面からなくすべきだと思います。その代わりとして、新たな方法で電力を作ることによって安全に発電することができて、今は使われていないものも活用できるのでいいと思います。
咲天:私たちは再生可能エネルギーを選択していくべきだと思います。放射線の影響のない安全な発電のしかた、また地球に優しいという二つの利点があるのでそれをどんどん後押しするために、固定価格買い取り制度などで政府がそのように動くように、私たちも声を上げていくべきだと思います。
満友:今の放射性廃棄物処理の問題は地層に埋めても一万年以上の管理が必要ということで未来の子供たちや私たちの世代にも関わっていく問題だし、健康の問題も原発だと30年経ったら白血病になったり甲状腺がんになったりしてしまうことなので、原発を止めるべきだなと思います。でもそうは言ってもやはり経済活動を進めていくためには大量の電力が必要なので、今は自然エネルギーをもっと取り入れるために技術を開発して、その自然エネルギーでまかなえない分を原子力でまかなう、その二つで共存していくようなエネルギーを選択するべきだなと思います。
咲天:それは原子力発電をずっと使っていくっていうことですか?
満友:今の54基ほど多くなくてもっと減らして、自然エネルギーを主体にして、補えない部分、工場とか大規模な生産を行う場所とかを原発でもっていくのかと思います。
朋子:今回の事故ほど大きくないとしても、また同じようなことが起こる可能性はあると思うんです。それでもあった方がいいと思いますか?
満友:ストレステストなどを行ってほんとに稼働してもいい状況を判断して、続けていった方がいいのではと思います。
ななみ:原発の中心の材料になっているウランは今のまま使っていくと100年後には無くなると言われていますが、それに対してはどう思いますか?
満友:確かにウランは100年後に無くなると言われているけれど、他の今考えられているエネルギーよりも埋蔵量は多いので、原発が補助的な役割でいれれば100年にはならないのかなと思います。
朋子:先ほどの話にあった核燃料の廃棄も、今のところではずっと地球上に残ってしまうもので、もしかしたら将来廃棄の方法が見つかるかもしれないけれど、もちろん見つからないという可能性もあり、その点でも問題だと思うんですがどう思いますか?
満友:確かに放射能廃棄物処理の問題や今回の事故と同じようなことが起こるかもしれないけれど、経済を考えると、原発と自然エネルギーを両立していくべきだと思います 以上