捨てられるペットを減らすためにペットショップができること
2014/01/19 米山菜子(17)
1日850匹、約100秒に1匹の犬や猫が保健所で殺処分されている(内閣府特定NPO法人ConoasS HPより)。一時の「可愛い」という感情に流され、ペットを飼ったものの、その後、飼い主の身勝手な理由で捨てられるペットは後を絶たない。そして、平成25年9月1日に動物愛護に関する法律の一部を改正する法律(改正動物愛護管理法)が施行され、「ペットショップでの犬や猫の夜間展示の禁止」などが新しく義務付けられた。捨てられるペットを少しでも減らすために、売る側のペットショップはどのように対応しているのだろうか。
東京のJR渋谷駅近くに、狭い空間に仔犬や仔猫を入れたケージが積み重なっているペットショップがあった。店内の壁には「預かり金0円で今日連れて帰れます」と書いた張り紙がある。店員に尋ねると身分証明書の提示とローンを組める20歳以上の人であれば、0円で連れて帰ることができるそうだ。値段も人気のトイプードルやチワワでも5万円~10万円とリーズナブルで若者の手にも届きやすい。
しかし、このような繁華街のペットショップのなかには衝動買いをさせる恐れがあると
ころもある。「衝動買いは避けてほしい」と訴えるのは、公益財団法人日本動物愛護協会の内山晶常任理事・事務局長だ。
東急東横線自由ヶ丘駅近くにあるペットショップA店では、カラフルなペットグッズが陳列された奥の一段高いところに、立派なケージに仔犬が一匹ずつ5~6匹が陳列されている。値段は同じトイプードルでも35万円~40万円と高価だ。店員に尋ねると、この仔犬たちは大会で優勝した犬の子どもなので値段も高いそうだ。そのため、衝動買いをする人は見られないという。また、ペットグッズを多く販売しているため、リピーターが多く、販売後も犬の様子を見ることができるそうだ。「最後まで責任をもって飼うよう、購入時の説明は怠らない」と店員は断言した。
同じく自由ヶ丘駅から住宅街に向かう商店街にあるペットショップB店は、明るい店内には仔犬が2匹ずつそれぞれ大きめのケージに入って遊んでいる。「1匹ずつだと、飼い主と一緒に暮らすうちに、自分が犬であることを忘れるので、幼い時に他の犬と一緒に遊ぶことで社会性を身に着けさせています」と店員が説明してくれた。それぞれの仔犬のブリーダーの氏名や写真が提示されている。気に入った仔犬の前で足を止めると、アルコール消毒液を手にかけてくれて、ゲージから仔犬を出して、抱かせてくれる。値段はどれも20万円台と最近の相場の価格だ。店員に尋ねると店内の仔犬、仔猫には全てにマイクロチップを装着しているので、購入後に行方不明になったり、捨てられたりしても、そのチップから飼い主の連絡先がわかることを購入希望者に説明して、衝動買いを防ぐようにしているという。販売後は、定期的に客に電話をし、ペットの健康状態や飼い主の心のケアも行っているそうだ。「ペットの一生を考えると、ペットを愛してくれる、温かいお家をできるだけ早く決めてあげることが私たちの使命です。そして老犬になって介護が難しくなったら、犬の養老院もあることをお伝えして、最後まで責任をもって飼っていただくようにお願いしています」と店員が話してくれた。
「理想的なペットショップは現状では少ない」、「法律を順守しモラルを大切にして、
より良いペットショップを目指して営業活動をしてほしい」と内山氏は話す。ペットショップは、もし飼い主が急にペットを飼えなくなったり、手放さなくてならなくなったりしても対応できるように、ペットと飼い主に寄り添ったケアを長くしていくべきだろう。そして、ペットショップは飼い主に対しても、命ある動物を飼う「モラル」を、売った後の丁寧なケアを通して長期間にわたって伝えていくことが必要とされるだろう。
これからのペットショップのあり方
2014/01/19 前田佳菜絵(13)
2013年6月から動物愛護管理法改正によってペットショップの夜間営業が禁止となった。最近はペットショップで動物を見てその場で購入してしまう 『衝動買い』 が増えていることも事実だ。ペットを飼う人が増えているなか、ペットショップの現状はどうなっているのか。また、これからの理想のペットショップとはどんな店なのだろうか。
東京都心の繁華街のペットショ ップと、近郊の自由が丘にあるペットショップを取材をしたところ、いずれのショップも動物を売る時間は法改正前から、法改正で定められた20時までだったそうだ。繁華街の店の店員は「理想のペットショップは、購入するお客さんにきちんと説明をして、買った後もケアすることができるところだと思う」と語った。また、自由が丘の店長は「なるべく早くペットの家を決めてあげて、ペットの人生のほとんどをその家で過ごさせてあげるのが理想のペットショップだと思うし、我々の使命だと思う」と語った。法改正後の対応について、繁華街のペットショップの店員は「20時以降のペットグッズの販売は法改正後も認められているのに、動物が入っているショーウィンドウにカーテンをしているため客が減ってしまった」と話していた。また、ペットの購入をその場で決めてしまう『衝動買い』を防ぐために、繁華街のペットショップでは20歳以下の人には動物を売らないようにし、20歳以上の人にも身分証明書があって契約書にサインした人にしか動物を売らないようにしていて、実際に返品された動物は今までにいないということだ。
一方、自由が丘のペットショップでは、販売している動物にマイクロチップを装着させていて、仮にペットを飼ってからやむを得ず捨ててしまってもペットの身元を調べて飼い主のもとに帰すことができるようにしている。つまりペットを飼うことに責任を感じてもらう活動をしていることを事前に客に言って、納得した人にしか動物は販売していないそうだ。
日本動物愛護協会に取材をした。常任理事・事務局長の内山晶氏は「理想的なペットシ
ョップは現状では少ないのではないか。動物を小さくてかわいいうちに販売しようと、早
く親や兄弟と離れさせれば、犬としての習性を身に着けないで成長してしまう可能性が高
くなる」と語る。また、「日本では、ペットショップがペットを飼うための仲介役として存在するのは、商業活動として認められているので、法に触れない限り止めることはできない。しかし、生きている動物を扱うのだから、法律を順守し、モラルを大切にしてより良いペットショップを目指して活動していってほしい」と強調した。
また、全国ペット協会にも取材をした。全国ペット協会とは、生き物に関わる人のレベルアップを目指して、説明会を開いて人材育成をしている一般社団法人だ。事務局長の赤澤暁昌氏は、理想的なペットショップのあり方について「ただ動物の購入の窓口ではなく、長く飼い主さんとつきあっていけて、いつでも相談にのれるところだ」と言う。法改正については「規制がどんどん強くなっている。ただ、もともと夜間に営業していたペットショップは法改正前も少なかったため法改正をしてもペットショップのあり方は大きくは変わっていない。つまり、今までも法律の中に収まってきていた」と言う。動物の深夜販売、インターネット販売をしていたペットショップもある程度は自主規制をしていたとも語る。また、最近増えている『衝動買い』については、動物を販売する際にはその動物の寿命など18項目を説明してから販売することが義務 づけられているため、簡単に動物を購入することはできないそうだ。最後に「どのペットショップも『もっと良くなりたい』と思っている。そのようなペットショップの手伝いをするのが私たち全国ペット協会の仕事です」と強く語った。
今回の法改正によって営業スタイルが変わったペットショップは少ない。しかし、まだペットショップには『衝動買い』や『殺処分』などの問題があることも事実だ。これからのペットショップのあり方がより良いものとなることに期待したい。