小泉璃奈(16)

 近年、「待機児童」という言葉をよく耳にする。待機児童とは保育施設に入れない子どものことをいう。その解決策の一つとしてベビーシッターの活用が挙げられる。他人の子どもを預かるベビーシッターだが、安全対策はどうしているのか公益社団法人全国保育サービス協会事務局次長、研修課長の長崎真由美さんに取材をした。 ベビーシッターをどのような人が利用することが多いのだろうか。長崎さんによると最も多いのは働くママだそうだ。次に多いのは、冠婚葬祭や兄弟の行事などで、子どもを一緒に連れていくことが難しい時に利用するケースだという。 ベビーシッターは現在の日本の法律には詳しいことが定められていない。そのため同協会では、自主基準を設け、その自主基準に賛同できる会社がこの協会の加盟会社になる。全国保育サービス協会は利用者の家に行って子どもを預かることがベビーシッターと定義付けている。保育園では複数の保育士が大人数の子どもを見るが、ベビーシッターでは1人のベビーシッター対1人の子ども、と形態面での違いがある。また保育園ではその保育園の方針に沿って子どもを預かる。ベビーシッターでは各家庭の方針に沿って子どもを預かるという点で大きく異なる。利用者の家で一対一の環境で子どもを預かるベビーシッターは究極の言い方をすれば利用者の家の鍵と子どもの命を預かる仕事だと長崎さんは言う。そうなると子どもを預ける親は不安を感じてもおかしくない。安心して子どもを預けるための安全対策はどうしているのか。 長崎さんによると、認定試験に合格するか指定校を卒業することで認定ベビーシッターになれるそうだ。また試験を受けるまでに新任研修会、現任Ⅰ研修会を修了する必要がある。研修の中で安全を確保するために子どもの発達と成長に応じた「年齢別安全チェックリスト」というものがある。計60個のチェックポイントがあり、事故を防ぐために生かされている。また、もしもの時に備えて応急処置や心肺蘇生法についても学ぶ。これら以外にも子どもの健康管理、年齢に応じた関わり方、ほめ方や叱り方などたくさんの学ぶべきことがある。そしてベビーシッターになる前の研修だけでなく、なってからも毎年研修がある。また全国保育サービス協会では毎年実態調査も行っている。こうした努力もあって、協会に報告される事故発生数は一カ月で3~4件程度、これまでに重傷を負う事故はほとんどなく、死亡事故は0件だそうだ。「事故が起きたらどうする」はもちろん大切だが「事故を起こさないためにどうすべきか」が何よりも大切だと長崎さんは言う。「20年前頃は欧米の高校生のアルバイトのイメージがあったベビーシッターが、今では働く女性が増加したため、欠かせないものとなっている。また、専業主婦にとっても育児で疲れたり、不安になる前に、例えば自分が美容院に行く数時間だけ子どもを預けるなどリフレッシュを兼ねて上手に利用してほしい」と長崎さんは話す。子育ての手助けだけでなく、子どもを持つ母親の精神面の支えにもなるベビーシッター。上手に利用して心身に余裕がもてれば、母親と子どもの関係も、よりよいものになるのではないだろうか。