村上 類(17)

 東京都が設置している「東京の自治のあり方研究会」の調査によると、平成25年の東京都の町内会・自治会の加入率は55%を切っている。加入していても必要性を感じない人が多い可能性もある。これからの町内会はどうあるべきか、首都大学東京の玉野和志教授と大田区田園調布親和会会長の馬渕雅之氏に取材した。

首都大学東京の玉野和志教授

 日本の町内会の始まりは明治時代までさかのぼる。当時は住民の自主的な活動を主としていた地域の自治組織が、徐々に行政の末端機構と位置づけられていき,戦時体制の下では隣組に整備されていくことになる.その後、第二次世界大戦後のアメリカの占領下で町内会という団体の否定等も経験したが、現在も町内会には参加するのが当たり前という風潮が残ってしまった。町内会長が家を訪ねてきたら、お金を払うという義務感が住民の負担になっているという。 
 
 さらに高度経済成長期以降の、お金ですべてを解決しようとする人の増加も理由の一つだと玉野教授は話す。社会において人間関係は必要不可欠なものであるが、直接関わるわずらわしさからか、最近ではSNSに重きを置く人も少なくはない。

 実は町内会は市区町村が作成したプリントの配布を始め、地区によってはゴミ捨て場や街灯の管理も担っている。それらの電気代やゴミ捨て場のネットの購入も町内会費で賄っている。行政が行わず住民主体で運営されるこうした団体は世界を見ても珍しいそうだ。

大田区田園調布親和会会長の馬渕雅之氏

 確かに町内会長も会員にも負担が大きい。後継者が見つからないのもわかる。しかし町内会や自治会等を必要と感じる人も現実的にはいることを忘れてはいけない。

 例えば防犯面だ。お金に余裕がある人は警備サービス会社に委託すればいいだろうが、
厚生労働省の発表によると平成24年の相対的貧困率が約15%である日本において、住民の目でお互いを見守ることが必要であることは明らかだろう。

 またセキュリティーシステムでも補えないのが災害時だ。田園調布親和会の馬渕氏は東日本大震災後、会員から集めた義援金の贈呈と防災の教訓を学びに宮城県東松山市を訪れたが、現地で町の人とのつながりの大切さを実感したそうだ。

 田園調布親和会では震災時ブログに被害を防ぐ情報を即時転載したり、会員全員へのヘルメット配布も行っている。また定期的に地元小学校で行われる防災訓練にも参加している。

 多くの住民にとって町内会は何らかの意味があるのではないか。もちろん、改善すべきところはあるし、関わりをいったん離れると戻りづらい。そこで玉野氏も馬渕氏も口をそろえて言うのは、必要最低限、顔見知り程度の仲になろうと心がけるということだ。普段忙しくて近所の人と会う機会が少ない人は、市民祭りや飲み会に参加するのでもよい。田園調布親和会ではバスツアーや、年末には恒例イベントとして夜回りも行っている。自分が加入している町内会を見直す機会を設けて、地元の繋がりについて考えなおしてみるのもいいのではないだろうか。