変化していく「オタク」

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記者:Kim Yeonjung(19)

 記者が小学生だった10年前、深夜アニメは親に内緒で見るものでした。ところが、今では世代に関わらず誰もがアニメを見ています。「アニメオタク」という言葉へのイメージも随分変わりました。これはさらに変わっていくのでしょうか。日本のアニメを世界的に広めているクランチロール社からみたアニメやオタクの今後について色々とお話を伺いました。

Crunchyroll(クランチロール)・・・ソニーグループ株式会社が所有するアメリカ合衆国の定額制ビデオ・オン・デマンドのストリーミングサービス。

 一昔前までは、「アニメファン=マイナーな趣味の持ち主」、というイメージという印象がありました。しかし、最近ではほとんどの人がアニメを楽しんでおり、アニメグッズを買う人も増えています。これほどにたくさんの人がアニメに親しむようになった理由の1 つとして、放送時間帯に関係なく、いつでもいくらでも自分のペースで視聴できるサブスクリプションサービスがあります。

 今回、日本のアニメを世界中に配信しているアメリカのCrunchyroll社でアソシエイト・ブランド・マネージャーとして働いてるモニク・クワハラさんに話を聞いてみました。

クランチロールホームページより
(日本では配信していないためコンテンツ視聴はできない)

モニク・クワハラさん:
マーケティングに関係すること全てに関わっている。2012から2013年に早稲田大学に留学されていたこともある。日本のクリエイターやライセンサーを、Crunchyrollのグローバルチームや各地域のチームとの橋渡しが役目。仕事内容は、マーケティングやコミュニケーション、コンテンツ、事業展開、プロダクト等のあらゆる分野に渡る。彼女の仕事には、アニメ業界に精通すること、世界のアニメ市場に詳しいこと、IP(知的財産権)やマーケティングの知識なども必要となる。

インタビュー

Crunchyroll社では現在何ヶ国に、どれぐらいの数のアニメを配信していますか?

現在、当社は世界で一番のアニメライブラリーがあります。200以上の国と地域に配信しており、また番組の数でいうと1300以上、エピソード数だとおよそ46,000のコンテンツがあります。長さでいうと24,000時間のアニメを見ることができるということになります。つまり、とってもたくさんということ!

日本では「OTAKU=アニメ好き」と思われがちですが、Crunchyrollではどのような意味で「OTAKU」という言葉を使っていらっしゃいますか?

注意したいのは日本と海外では「OTAKU」との意味合いが全く異なるという点ですね。日本ではネガティブなイメージが強いと思いますが、それはアニメに限ったことではなく、鉄道オタクやコンピューターオタクなどの使われ方でも同じではないでしょうか。

しかし、特に欧米市場では「OTAKU」は少なくともポジティブな意味合いを持ち、純粋にアニメファンそのものを指す言葉になっています。だからCrunchyrollでは「OTAKU」をとてもポジティブな意味で捉えています。と言っても国際市場で展開していくためには、「OTAKU」という言葉を一般的に使うようなことはしていません。

Crunchyrollで働いている人の中で、「自分はOTAKUだ」と自負している方はいらっしゃいますか?

もちろんです!Crunchyrollには堂々としたOTAKUの社員が多いです。世界中に社員がいるので、詳しい人数を把握できていませんが・・・、おそらく感覚でいうと50%が自分はOTAKUだと思っているんじゃないでしょうか。そもそもCrunchyrollで働くには、アニメが好きである必要がありますからね。

OTAKUという言葉がそのままアニメのタイトルにも使われていますが、海外でもOTAKUという言葉を使っていますか?

そうですね、日本以外の国では、特にアニメ好きのコミュニティ内でOTAKUという言葉をポジティブな意味で使っています。海外でのアニメファンの集まりなどは、”〇〇オタク”と名付けるグループなんて多いですよ。

日本のアニメはもっと世界に受け入れられると思いますか?

もうすでにそうですよ。個人的には、アニメはポップカルチャーを牽引する力があり、特にZ世代の子どもたちに人気があると思います。Z世代の子供達は主要なストリーミング・サービスでアニメを見ることができ、そしてアニメはあらゆるエンターテイメントミュージシャンやアスリートから何千人ものファンを魅了しています。

私がマーケティングで関わったイベントですが、例えばニューヨークのタイムズスクエアで鬼滅の刃の最終話放送を祝うことができました。その時は約1万人のファンが集まり、ニューヨークタイムズスクエアで行われたアニメ関連のイベントの中でも最大規模になりました。

参考:Anime News Network – Official

日本では普通のことかもしれませんが、私がセーラームーンやポケモンを見ていた90年代のアニメーションから考えると、とてもニッチなジャンルから大きなジャンルへと変化していると感じます。

また今ではTikTokのアニメはZ世代の間では主流ですし、アニメを見ていないとクールじゃないという風潮があります。つまりアニメはすでに主流であり、より受け入れられているものになっていると思います。

最後に、モニクさんの好きなアニメと、好きなキャラクターを教えてください。

私が好きなアニメは「ハイキュー」で、好きなキャラクターは一人には絞れないけどヒナタが好きです。何事にも一生懸命でとにかくかわいくて好きです。


 今ではアニメは日本以外の世界中で愛されている。そして何より昔とは違い、「OTAKU」という言葉はいい意味で捉えられることが増えています。海外だけではなく、日本でも言葉の意味合いが変わってきています。最近では「推し活」という言葉をよく聞くようになりました。日本でもZ世代の間で話題になりつつあるものになっており、アニメ市場は2011年から10年で2倍に拡大*しているそうです。今後のアニメ市場はさらに大きくなり、またCrunchyroll社などのサブスクリプションによりより広く、多くの国で受け入れられていくかもしれません。

*参考:一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2022」


<取材後記>
 私がアニメを見始めた小学生の時、周りの人はジャニーズやK-POPなどにはまっていてアニメ、特に深夜帯のものを見ている人はジャンプ作品であろうとほとんどいませんでした。しかし、いつの間にかアニメ文化が広まり、痛バッグ(=推しの缶バッジをトートバックなどのカバン一面いっぱいに着けたもの)や髪を染める際も推しの色をインナーやグラデーションとして入れる人が増えたように思えます。あのころと比べてみると、アニメ文化は世界だけでなく日本の大衆文化としても受け入れられたように思えます。