起業家精神、SDGsを学んだ10日間
記者名:Minato Suzuki(16歳)
2025年8月17日から8月26日までの10日間、私は TOMODACHI MUFG Sustainable Entrepreneurship Program 2025 に参加した。このプログラムは日本全国の高校生を対象としたもので、約2か月間の事前研修を経て、サンフランシスコと周辺地域で10日間の渡米研修を行う。この経験を通して、私は大切な仲間たちと出会い、自分自身を成長させることができた。
 TOMODACHI MUFG Sustainable Entrepreneurship Programは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の支援の下、米日カウンシルージャパン (USJC) TOMODACHIイニシアチブが主催するプログラムである。
 参加を希望する場合、エントリーフォームの記入と面接が必要となる。応募の際には、英語力そのものよりも英語を使って積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が重視されていた。
 合格した後は、2か月間の事前研修を受けることが必要となる。事前研修は2週間に1回、オンラインで行われた。
 こうして選ばれた全国の高校生20名が、今回のプログラムに参加した。
参考:TOMODACHI MUFG Sustainable Entrepreneurship Program – VIA | Volunteers in Asia
なぜ挑戦しようと思ったのか
私がこのプログラムに応募した理由は、異文化を学ぶことで視野を広げたかったからである。私にはまだ長期留学経験がなく、自分と全く考え方が異なる人々への理解が足りていないと感じることがあった。そのため、このプログラムで同年代の友人と英語を使って話すことで、英語のスキルと異文化理解を深めようと考えた。

プログラムでの学びと体験
数多くのプログラムがあった中で、特に印象に残った4つの体験を紹介したい。
①挑戦する勇気と行動力
2日目にスタンフォード大学のキャンパスを見学した。そこではまず、参加者同士で交流を深めるための宝探し形式のアクティビティが行われた。チェック項目の中には、道を歩いているスタンフォード大生に話しかけ、彼らを説得して彼らの自転車に乗せてもらうというものまであった。最初は緊張したものの、実際に学生と会話することで現地の雰囲気をより身近に感じることができた。
また別の日には起業家のサマイラ・メタ氏による講演が行われた。メタ氏は現在17歳で、子どもでも分かりやすくプログラミングを学ぶことができるボードゲームを開発し、10歳の時に会社を立ち上げた。私たちと同年代でありながら、自らのアイデアをもとに社会に挑戦している姿が印象的だった。
②リーダーに求められる姿勢
MUFGサンフランシスコオフィスを訪問し、リーダーの方々よりお話を伺った。お話の中では「リーダーとは明確なビジョンを持ち、それを他者に納得感をもって伝えることができる人物である」と、理想のリーダー像が示されていた。
また、「明るい職場づくり」を特に重視しているともおっしゃっていた。実際、訪問中の会話の中でも、社員の方々の間には冗談を交えたやり取りが多く、職場全体に温かい雰囲気が感じられた。明るい職場を実現するために、まず部下の意見を一度受け入れ、積極的に質問を投げかけることで、部下が「話を聞いてもらえている」と感じられるよう心がけているとのことであった。
③SDGsと世界の課題を学ぶ
Lux Research 社のイアン・ラインハート氏や、Vivaldi Technologiesの共同創設者である冨田龍起氏からSDGsに関する講義を受けた。地球規模での課題解決に向けて、企業がどのような取り組みを行っているのかを学び、身近な生活と世界のつながりを意識するきっかけとなった。
特に印象に残ったのが、国連で勤務するロビン・エンドレス氏によるSDGsゲームだ。このアクティビティは、実際の国際連合での会議を模したもので、2人1組になってカードを使いながら他の参加者と交渉し、それぞれのチームの目標を達成していくという内容のものである。自分の利益だけを優先しても全体のバランスが崩れてしまうため、他のチームと協力しながら解決策を探ることの難しさと重要性を実感した。
④日米の歴史とつながりを感じて
サンフランシスコのジャパンタウンを訪れた。街の歴史や日系人コミュニティについて説明を受け、異国の地で根づく日本文化に触れた。
ほかにも、サンノゼ日系アメリカ人博物館 Japanese American Museum of San Jose(JAMSJ)も訪問した。館内では、日系アメリカ人がアメリカ社会でどのように暮らしていたのか、そして第二次世界大戦中に強制収容された日系人の歴史について詳しく説明していただいた。展示を通して、日系人の方々の苦労と努力の歴史の重みを肌で感じ、過去を知ることの大切さを改めて実感した。

このプログラムを通して学んだこと
このプログラムの中で、私が最も心に残っている言葉がある。スタンフォード大学を訪問した際、スティーブン・マーフィー・重松教授にお話を伺った際に、教授がアインシュタインの言葉を紹介してくださった。
“Learning is experience. Everything else is just information.”
「学びとは経験である。それ以外はただの情報だ。」
この言葉の意味を、私はこの10日間の研修を通して実感することになった。
研修が始まった当初、私は他の参加者に気後れしていた。自分よりも積極的にゲストスピーカーへ話しかける姿が、とても眩しく見えたからだ。ところが日が経つにつれて、その思いは少しずつ変化していった。ゲストスピーカーの一人ひとりが、自らの挑戦や苦労の経験を率直に語ってくれたからである。その言葉のひとつひとつが、「経験から学ぶ」というアインシュタインの言葉を思い起こさせた。最初は自信がなくただ話を聞いているだけだったのが、徐々に自分から質問ができるようになった。
さらに、夜の自由時間でさえも熱気にあふれ、みんなが自ら学ぼうとしていた。参加者の中には自分の課外活動に熱心な人や、学校での活動に精力的に取り組んでいる人が大勢いた。夜遅くまで進路や自分の考えについて語り合う中で、彼らの輝かしい側面だけでなく、その裏にある努力や葛藤を知ることができた。そうして私は、「誰でも最初からすごかったわけではない」ということを、実際の経験を通して理解するようになった。
挑戦することを後押ししてくれる環境に身を置いたこの10日間は、まさに“学びとは経験である”という言葉を体現した時間だった。自分の殻を破り、一歩を踏み出すことでしか得られない学びがあることを強く感じた。
皆さんもぜひ、このプログラムで“最初の一歩”を踏み出し、自分だけの「経験からの学び」を見つけてみてほしい。

自己紹介: アメリカに行くのは初めてだったので、目にするもの全てが新鮮でした。高いビルや建造物が少なかったので空が異様に大きく感じられたのが特に印象的でした。







