国際大会を通して見えた学力・コミュニケーション・挑戦意識

記者:Mayu Harada (16歳)

The World Scholar’s Cup(WSC)は世界中の高校生が教養を競う国際大会であり、その場には、教室とは異なる学びの形が広がっています。私は高校1年生の時、県のプログラムを通じてこの大会を知り、韓国での世界大会に出場しました。中学から英語を始めた「地方の公立高校生」として、帰国子女のチームメイトと協力しながら直面した英語の壁や、世界の同世代を通じて体感した「世界」についてレポートします。

World Scholar’s Cupとの出会い

 私はまず、茨城県教育委員会が実施している「次世代グローバルリーダー育成プログラム(NGGL)」のメンバーに選ばれたことがきっかけでWorld Scholar’s Cup(以下WSC)を知りました。英語や国際的なことに興味のある中2〜高1を対象とする二年間のプログラムで、その中にWSC参加が組み込まれていました。私は情報を知るのが遅く、高校1年生の時、参加資格ギリギリで滑り込みました。オンラインの英語レッスンの料金の一部を県が負担するなど、英語力を実際に伸ばせる環境が整っているプログラムです。WSCに出場する際の費用についても、県から一定の補助を受けることができ、経済的な面でのハードルが下がったことは大きかったと感じています。私の知っている先輩が過去に参加していたこともWSCへの挑戦を後押ししてくれました。

ソウルラウンド

チームワーク

 WSCではチームワークが求められる場面が非常に多いです。Debate、Collaborative Writing、Scholar’s Bowlなど、ほとんどの競技が三人で相談し、役割分担し、決断を行う形式でした。私は帰国子女ではなく、中学から英語を始めた、いわば典型的な地方の公立高校生です。一方、チームメイトは帰国子女で英語表現力が高かったため、私は自分の得意な情報収集力を活かして教材や関連資料を集め、チームで戦うための土台を作りそのうえで、英語での適切な言い回しなどは彼女たちに教えてもらい、互いの強みを生かした役割分担を行いました。競技を通して、得意と不得意を組み合わせて総合力を最大化することが、結果につながると感じました。また、韓国でのGlobal Roundでは、学術以外の摩擦も経験しました。台湾の国旗を巡る問題、中国チームの複雑な反応、インドネシアの高校生の圧倒的な主張の強さ。教科書やテレビでは見えない世界の温度差を、同世代を通して体感しました。

WSC用語集

Debate:与えられた論題に対して賛成・反対に分かれ、論理性・説得力・反論の質などを競う討論競技。

Collaborative Writing(共同ライティング):チームの中で与えられたお題の中からそれぞれテーマを選び制限時間内に英語エッセイを完成させる競技。

Scholar’s Bowl(スカラーズ・ボウル):歴史・哲学・科学・文学・宗教・文化など幅広い分野から出題される学術クイズに、チームで協力して答える早押し形式の競技。

英語の壁

 私が最も苦労したのは、英語でした。英語が母国語ではない国のチームの典型かもしれませんが、問題文を読んでいる途中で制限時間に達してしまうことが多くありました。もしWSCがすべて日本語で行われていたなら、もっと効率的に学習できたのではないかと勉強しながら頭を抱える場面が多く存在しました。しかし実際には、「英語で処理する → 日本語で理解する → 思考する → 英語で自分の考えを表現する」という四段階を経る必要があり、その時間的ロスは大きな負担でした。一方で、この環境は自分の弱点を補う方法を考えるきっかけにもなりました。具体的には教材や関連資料をオンラインで探し、TOC(Tournament of Champions)*に進んだ先輩に話を聞き、対策の優先順位を自分で設計しました。自分から動かなければ情報が入ってこない環境にいたからこそ身についた部分も多いと思います。こうした経験を通して身についた「情報収集と作戦設計」は、WSCにとどまらず、私自身の大きな強みになりました。


*TOC(Tournament of Champions):World Scholar’s Cupにおける最上位ラウンド(世界決勝大会)。各地域のラウンドで優秀な成績を収めた参加者のみが進出できる。毎年アメリカのイェール大学(Yale)で開催。

イェール大学(Yale)

「英語話せないから」で諦めるのはもったいない

 前述の通り、私は言語面で苦労する場面が多くありましたが、それ以上に「参加して良かった」と強く感じています。特にGlobal Roundを通して、日本の高校生のポテンシャルは想像以上に高いと実感しました。実際、TOC(Tournament of Champions)への到達率は世界全体では約20%であるのに対し、日本人参加者は約50%程度ありました。なので基礎学力の面では日本人は決して劣っていないと思います。

 一方で課題だと感じたのは、「挑戦のハードル」の高さです。「英語が不安」「受験準備がある」「海外は危険だと親に言われた」といった理由で、挑戦そのものを諦めてしまう人が多いと感じました。しかしWSCは「英語だけ」の大会ではありません。クイズ部門では日本の宗教や文化が問われる問題もあり、教養の面で十分に戦える領域が存在します。「英語がネイティブ並みであること」が参加条件だと思い込み、挑戦しないままでいるのは非常にもったいないことだと思います。

チームメダル

WSC用語集

チームメダル:ディベート、ライティング、クイズなどの競技結果をもとに、チーム3人の総合得点で評価・授与されるメダルのこと。個人ではなくチーム全体の成果が問われる。

WSCに向いている人

 WSCに向いている人は、「コミュニケーションを継続的に取ることを苦にしない人」だと感じます。日本の一般的な学術大会ならば、一人で黙々と深掘りすることで結果を出せる部分がありますが、WSCはディベート、共同ライティングなどこの大会は多くの場面で他者との交流が求められます。だからこそ、完璧な英語力や専門性がなくても、「関わろうとする姿勢」があれば十分に挑戦できる大会でもあります。

世界の高校生と関係を築く方法

 大切なのは、まず笑顔で話すこと。最初の話題はアニメなど相手が入りやすいものから入り、そこから学校や日本の話へと広げていきます。いきなり深い議論に入るより、共通の文脈のフックを作ることが関係構築の第一歩だと感じました。

最後に

 WSCの魅力は競技だけではありません。ダンスパーティーや文化交流イベントなど、参加者同士が自然に交流できる場が多く用意されており、海外の空気や多文化的な雰囲気に存分に触れることができます。学びと出会いの両方が詰まった経験でした。みなさんも是非参加してみて下さい!

みなさんも是非参加してみて下さい!

自己紹介: 高校二年生です。これまでにWorld Scholar’s Cupへの参加やトビタテ留学JAPANでのフィンランド留学を経験しました。それらが一段落した現在、英語を日常的に使う機会が減り、英語力の維持に課題を感じています。一方で最近は研究活動に特に力を入れており、社会心理学や計算社会学といった分野に強い関心を持っています。


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