記者:曽木颯太朗(15)
近年株式投資に対する注目が集まっている。背景にあるのは新興IT企業のめざましい発展やデイトレードと呼ばれる株の短期取引によって巨額の利益を生んだ話などがある。関心の高まりから、実際に子どもが株式投資を始め、それに対するきちんとした投資教育も行われ始めている。このような教育に対して、「正しい株式投資を教えるもの」として歓迎する声がある一方、株取引をゲーム感覚で行ういわゆる「マネーゲーム」につながるものだとして反対する意見もある。私たちはこの投資教育について賛成・反対それぞれの立場の方々に取材を行った。
2006年に、投資教育を推進しているマネックス証券の関連会社マネックス・ユニバーシティ社長の内藤忍さんにお話をうかがった。マネックス証券では、子どもに10万円の資金を渡して投資・運用させる教育プログラム「株のがっこう」など、子どもへの投資教育を積極的に進めている。
内藤さんは子どもの株式投資の長所について、「お金に対する感性がよくなり、投資を通じて社会に関心をもつことができる」という。短所については、「(金銭面での制限が大きいにも関わらず)大人と同じようにリスクを負うことだ」と述べた上で、「金銭感覚を失うことはない」ともいわれた。そのような点から投資教育には賛成しており、「株のがっこう」プログラムに対する子どもたちからの反応も「社会に貢献できた」など上々だという。その一方で、株式投資がマネーゲームになっている一部の状況については「好ましくない」とし、「株式投資は本来会社に資金を与えて経済を循環させるためのものだ」と語った。デイトレードによる一攫千金の話も実際に成功する人はごくわずかしかいないそうだ。
投資教育に反対の立場をとっている慶應義塾大学ビジネススクール助教授の小幡績先生は投資教育について、「この時期には、英語など他にもっと大事なことがある」と語り批判的だ。いつかはやる必要があっても、少なくとも子どもの時にはやらなくて充分だという。子どもが株式投資によって株主になることについても「株主は経営者を監視する立場にあり、子どもが株主になると、その機能が失われる」と警鐘を鳴らしている。
投資教育は株式投資について正しい知識が学べるという点で役に立つかもしれない。しかし、下手に子どもに投資の話をすると「儲かる」「おもしろそう」というイメージだけが先行して高リスクな投資に手を出すことになりかねない。またお金の運用は投資だけではなく貯金・預金という方法もあり、「投資教育」という形で投資にばかり眼を向けさせるのも疑問に思う。もっと幅広い視野での金融教育が必要なのではないかと考えてしまう。