毛利美穂(17)

 現在の日本では、夫婦双方の希望であっても夫婦別姓は法律では認められていない。しかし1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申していて、一時は夫婦別姓が日本で認められるのも間近であると思われていた。ではなぜ未だに夫婦別姓は行われていないのか、賛成派、反対派の双方から話を聞いた。

榊原富士子弁護士に取材

 榊原富士子弁護士は夫婦別姓を希望する人の大きな理由として、それぞれのアイデンティを尊重できるということをあげた。名字が変わることで、他人がプライバシーに踏み込んでくるということもその理由に挙げた。

 東京都に住む夫婦別姓賛成派の渡辺二夫氏と加山恵美氏(いずれも40代)は、事実婚夫婦である。二人は一度渡邊姓で結婚したが、恵美さんが仕事上で旧姓の加山を通称として使用することに限界を感じ、姓のために戸籍上は離婚した。
  
 反対する男性たちは、名字を変えることで女性が男性の家に嫁ぐという考えや、名字を変えることが離婚した場合に困るという考えに結びついてしまうという理由からである。しかし渡辺氏たちは、国民全員が夫婦別姓にするべきだといっているのではなく、夫婦別姓にすることを選択できるようにしてほしいと考えている。加山氏は「離婚するときには、相手の姓か、自分の姓かを選べるのに、結婚する時に選べないのはおかしい」と話した。旧姓の通称使用は公的文書やホームページのプライバシーマークページなどではできない。そこだけ違う姓での記入になってしまうのである。また事実婚だと、互いに法定相続人にはなれず、手術の立会いや承諾書に署名する際、家族として扱ってもらえない可能性があるなどさまざまな日常生活上の不便や不利益が発生しすることがある。

渡辺・加山夫妻に取材

 これに対し、反対派の亀井静香衆議院議員は「今までの風習を乱してしまうし、社会生活で不便が生じてしまうような危ない冒険をする必要はない」と語った。強要ではなく選択制にすることを認めて欲しいということにも、「話し合って、姓をどちらかに合わせられるから男女差別でもないし、便利さを壊してまで変えてしまう必要はない」と言う。また、生まれてくる子供の姓が親と違うというのは世間に本当の親子であるかと疑問を抱かせてしまい、幼い子供の姓を親が勝手に決めてしまうことにも問題があると指摘した。賛成派の渡辺氏は「子供の姓と親の姓が違うというのは、これから制度を整えていけば世間にも夫婦別姓が知られるだろうし、問題はない。また、『加山君のお父さん』と呼ばれても柔軟に対応すれば、問題ないと」と話した。榊原氏は、「夫婦別姓の選択肢を認めるのは、女性があたり前に働きつづけることを社会が支援すること、婚姻をしやすくすることでもある」と語った。

亀井静香氏に取材

 先進国の中で夫婦別姓が認められていないのは日本ぐらいであるが、これからの夫婦別姓問題は、少子化にもつながってゆき、私たち若者に大きく関係してくる。将来結婚する時に、姓を選べるようになっているか、今のまま選べないのか、注目していくべきなのは私たち若者なのである。