記者:川口洋平 (17)
「アド変しました。まだ連絡いってない人いたらメールちょうだい」
これは『プロフ』と呼ばれる自己紹介サイトに携帯のメールアドレスとともに、掲載されていたものだ。『プロフ』は誕生日や血液型から口癖、足のサイズまで、あらかじめ設定された数十項目の質問に答える形で自己紹介ページを簡単に作成できるネットサービスだ。日本で最大級のプロフサイト「前略プロフィール」を運営している楽天によると、現在同社のプロフ登録者数は 445 万人に達し、そのうち8割が 14 ~ 19 歳の若者だという。
『プロフ』は手軽に公開できるために、通っている学校名、本名、顔写真まで公開している人もいる。インターネット上に公開されている『プロフ』は、一般のサイトと同様に検索をすれば誰でも見ることができるため、個人情報を悪用した犯罪に巻き込まれる可能性も考えられるにも関わらず、なぜ安易に自分の個人情報を公開してしまうのだろうか。
実際に『プロフ』を使用しているという高校生は、「友達に見せるだけだから」といい、「他の人がわざわざ見るとは思えない」と危機感がない。また別の高校生は入力フォームに言葉を入れて登録するだけなのでホームページを作っている感覚はあまりないそうだ。
自分の個人情報を公開するのは個人の勝手だが、「連絡ちょうだい」という文章とともに、他人の連絡先を掲載するというネットいじめのような悪質な例や、「恋人、セフレ募集中、カラオケ→ 2 万~、デート→ 3 万~」と書き込んで出会い系サイトの代わりに使用している例も後をたたない。
「前略プロフィール」を運営している楽天株式会社インフォシーク事業長の濱野 斗百礼 ( ともあき ) 氏によると、「電話番号などの個人情報の書き込みをしないように利用者に呼びかけ、問題のある書き込みを見つけた場合は削除するようにしている」という。ただ、現在のサイトに個人情報が多数掲載されている状況を見ていると、全ての書き込みをチェックしきれていないようだ。質問には「メールアドレス」という項目もあり、メールアドレスを公開しやすいような仕組みにもなってしまっている。
安易に個人情報を公開してしまう私たちにも責任があるが、個人情報を公開してしまいやすい仕組みにしている業者が有効な対策をとっていないことも問題だろう。
ネット問題に詳しい、群馬大学社会情報学部の下田博次教授は、子どもたちはネットを遊び感覚で使用し、物事の良し悪しを判断できないため、携帯電話会社がネットのフィルタリングを義務化するべきだと主張する。 12 月 10 日には増田総務相がフィルタリングを原則義務化するように携帯各社へ要請し、来年 1 月からフィルタリング義務化が始まる見込みだ。
ネット内パトロールによって、子どもを犯罪などの被害から守ろうとする動きも始まっている。全国少年警察ボランティア協会では、3年前からサイバーボランティアという少年補導員を中心とした113人体制でネット内パトロールを行っている。同協会の富永一法事務局長によると、「今までにネットを巡回して発見した違法な業者や、出会い系サイトに登録している子どもたちへ、注意を促すメールを送った件数は 9 千件に達する」という。
神奈川県でサイバーボランティアをしている人は自らの経験から、「法律で危険なサイトを規制しても、いたちごっこになってしまい、あまり意味がない」という。根本的にこの問題を解決するには、「インターネットの危険性を理解できない子どもには携帯を持たせないことしかない」と強攻策を主張する。 プロフは中高生の名刺のようなもので、初対面の人に自分を知ってもらうのにとても便利である。便利なものを利用する上で、私たちもトラブルに巻き込まれないように、個人情報を掲載する際には気をつけるべきだ。掲載は自己責任かもしれないが、一方で、ネットの危険性を十分に理解していないような子どもに、インターネットの利用を規制しないオトナにも責任があるのではないだろうか。
プロフが抱える問題
記者:貝原萌奈実(18)
近頃、中高生を中心に「前略プロフィール」という自己紹介サイトが巷で流行している。「前略プロフィール」は通称「プロフ」と呼ばれており、アンケート形式で項目を埋めていくだけで自己紹介ページを容易に作成できるウェブサービスである。メールアドレスを交換する際に、自分のプロフサイトのアドレスを一緒に交換する人も多く、今や10代の名刺代わりとまで言われている。
この爆発的なヒットを呼んだ「前略プロフィール」を提供しているのは、楽天株式会社である。「元々プロフはホームページの自己紹介パーツとして作られた。まさか中高生の間でこんなに流行るとは」と楽天インフォシーク事業、コミュニティー事業部長の前田靖幸氏は述べている。
このような人気の一方で、あまりに手軽に作成できてしまうために、個人情報の流出やイジメの温床にもなっていることが問題となっている。10代のプロフ利用者は、あくまでも「身近な友達への自己紹介ツール」としてプロフを利用しており、世界中の人が閲覧できるインターネット上にホームページを作成しているという感覚がないのだ。
プロフや出会い系サイトなどのネット書き込みをチェックしながら、いかにも中高生で危なそうな書き込みをした人たちに注意喚起を行っているサイバーボランティアという団体がある。サイバーボランティアは、青少年の非行防止と健全育成を目的とした活動に取り組む、全国少年警察ボランティア協会からの委託で活動している。同協会の富永一法事務局長によると、「現在サイバーボランティアは全国で113人。主な活動は、少年へメールでの注意喚起、パソコンでの少年相談、有害サイトへの警告である。今年だけでも、有害な情報を書き込んだ青少年へ9000件の注意喚起メールを送った」ということだ。
プロフや掲示板などでは、住所や顔写真といった個人情報を公開したり、身近な人の悪口を書いたりされていることも多い。酷いケースでは、他人になりすまして滅茶苦茶な内容でプロフが作成されている。実際に活動している神奈川県のサイバーボランティアの1人は「これは中高生がネットの危険性を知らないのが原因」だという。「何より携帯電話の危険性を保護者が理解していない。 最近の子どもは親とのコミュニケーションが不足しているのが一番の問題だと思う。それと同時に親同士や学校との連携ももっと強めるべき」と同氏は述べた。
インターネット機能の付いた携帯電話を子どもに持たせている国は日本だけである。プロフのように誰でも簡単、気軽に参加できるツールやサイトが普及しているが、携帯電話の機能をはじめ、子どもたちがその機能をどのように使っているかを十分に把握している親はほとんどいない。
ネットで個人情報を公開しないよう呼びかけている群馬大学社会情報学部の下田博次教授は「子どものネット利用で一番危険なのはグレーゾーンと呼ばれるところだ。グレーゾーンとはサイト利用自体は違法ではないが、間違った使い方をすれば犯罪に結びつくサイトのこと。プロフやブログなどもこれに当たる」と話した。下田教授によると、群馬では子どもたちに注意喚起を行う大人に市民インストラクターの資格を与えているという。「このような団体が全国に広まれば」と下田教授は述べていた。
誰もが簡単にインターネットを使えるようになった一方で、ネットの危険性に対する意識は、なおざりにされてきてしまったように思える。今後楽天は、「システムの問題点は改善していくつもり」だという。
まずは親子で話し合う機会を増やし、子どもも大人ももっとネットの危険性の理解を深め合っていくことが必要なのではないだろうか。