記者:曽木颯太朗(15)

 「ひとつのことに熱中し、のめり込んでいる人」

 これは、僕が「オタク」という言葉を初めて聞いたとき、「オタクって何?」と友だちに尋ねた際に返ってきた言葉だ。そのとき「マニアとも言うんだよ」とも言われ、小学生のころはずっとそのように思ってきた。日本史が好きな僕自身もオタク呼ばわりされたことが何度かある。

 ところが中学校に入って「オタク」とは「少女アニメが好きなちょっと変な人」と聞くようになった。電気街として有名な秋葉原はいつしか「オタクの聖地」と呼ばれるようになるオタクを取り上げた小説『電車男』は大ヒットを記録し社会現象にもなった。テレビや新聞でも盛んに報じられ、英語の辞書に「 Otaku 」という言葉が掲載されたという報道や外国人までもがオタクと化しているという報道もあった。

 外国でもオタク文化が受け入れられ始めていると聞いて、随分驚いた。一体外国人がオタクについてどう考えているのか興味を持ち、取材を始めた。

 そもそもオタクとは何なのか。オタクについて詳しい大阪芸術大学客員教授の岡田斗司夫さんによれば「定義は非常に難しいが、広い意味では子どもが夢中になるような趣味を持つ大人、狭い意味では秋葉原に行ってメイド喫茶などに通うもてない大人」だそうだ。またマニアは同じ意味の言葉であるが、より肯定的なニュアンスがあるといっていた。

岡田斗司夫さん

 最近の外国人オタクに関する報道でもいくつか怪しいところがあると岡田さんは言っていた。「 Otaku 」という言葉は英語圏では一部のインテリの間では通用するものの、とくに社会全体に浸透しているわけではないらしい。もっぱら「 geek 」や「 nerd 」という言葉が使われているそうだ。

秋葉原で街頭インタビューを行った

 外国人はオタクについてどう考えているのか、オタクの「聖地」である秋葉原にいる外国人に取材をしてみた。すると少し意外な答えが返ってきた。オタクというものがよく分かっていなかったのだ。こちらで「 geek 」や「 nerd 」という言葉を使ってもよく分からない様子だったのだ。ともあれ、数人に聞いたところみんな「こだわりを持つことはよいこと」だと言っていた。

 対して秋葉原にいた日本人に聞いてみると半数近くの人がオタクという言葉に「否定的なイメージがある」と答えた。 10 代のオタクの男性はオタクという言葉を「新しい差別用語」とまでいってのけた。

 オタクは日本を語るうえで文化的にも経済的にも無視できない存在となりつつある。一方でオタクが偏見をもって見られていることも確かだ。しかし他人に迷惑をかけるわけではなく、あまり異端視することはないと思う。岡田さんも「冷たい目で見る世間のほうが間違っている」と言っていた。一つのことに打ち込んでいられるのであるから、趣味がなくぶらぶらしているよりよっぽどマシだと思う。

 オタクに偏見を持つ要因の一つはメディアの報道の仕方とも考えられる。外国人オタクもそのほんの一部を取り上げたに過ぎないのに、まるでそれが全部だといわんばかりの報道をしている。外国でそれほどオタク文化が浸透しているとも思えない。

 オタクやその文化が別に好きだというわけではないが、もっと大手を振って歩けるように願うばかりである。