記者:大久保里香(16)

 現在、急激に国内からも海外からも注目を浴びるようになった日本のオタク文化。日本人のほとんどの人々が「オタク」という言葉を知っている。しかし、「オタク」とは何かと聞かれたとき、正確な定義を答えられる人は少ないだろう。「オタク」とは一体何なのだろうか。オタクについて詳しい大阪芸術大学芸術学部の教授である岡田斗司夫氏に取材をした。

大阪芸術大学芸術学部の教授 岡田斗司夫氏

 「オタク」という言葉を聞くと、アニメやマンガ、秋葉原といったものが頭に浮かぶ人が多いだろう。岡田氏によると「オタク」という言葉には広義と狭義の二つがあるという。狭い定義での「オタク」とは「秋葉原で楽しんでいる二十歳以上のモテない男子」であり、広い定義では「大人になっても子供が夢中になりそうな趣味をやめない人たち」である。つまり、「オタク」とは“大人でありながら大人になりきれない人”のことを指すのだろう。しかし、「オタク」の人でなくても子供が夢中になるようなことに少なからず愛着を持っている人は多くいるはずだ。携帯にキャラクターのストラップをつけることや、ジュースなどについてくるおまけのフィギュアを会社の机に飾ることもそのよい例である。今では珍しくなくなった、このような光景は、社会全体の幼児化を意味するのではないだろうか。社会の幼児化が進むことによって、「オタク」が増え、「オタク文化」が広く展開され、注目を浴びるようになったともいえる。

 オタクがこれから増える傾向にある日本の社会。「オタク」が増えると、社会にはどのような影響が出るのだろうか。まず、大人の幼児化がさらに進むと考えられる。つまり、社会が「オタク化」してしまうのだ。岡田氏は「大人が幼児化することは責任力が低下することである」と語った。責任力が低下すると社会のルールを破る人が増加する。また、「オタクが増加しすぎると社会が成り立たなくなる。」とも語っていた。このまま「オタク」が増え続けることは、日本の社会にとって危機的状況を意味するのではないだろうか。この危機を回避するためには、大人一人一人が大人としての自覚を持ち、しっかりと社会の責任、いわば義務を果たすしかない。社会全体の責任力の低下は「オタク」増加に伴う問題点であるが、これは絶対に避けなくてはならない。

 オタク文化が注目を浴びるようになって広がった「オタク」という言葉。しかし、いまいちどのような意味があるのか把握しづらい言葉でもある。「オタク」という言葉は人にどのような印象を与えるのだろうか。一般の人に秋葉原でオタクについての街頭取材を行った結果、「オタク」という言葉に良い印象を持っている人はほとんどいなかった。「オタク」という言葉を聞くと、引きこもりやマニアック、ネガティブという印象を持つらしい。差別用語の一種であると言う人もいた。「オタク」というたった 3 文字が人と人を区切ってしまう差別用語であるのならば、この言葉は使われるべきでないのかもしれない。しかし、「オタク」という言葉の悪い印象に反して、「こだわりを持つことはいいと思う」、「集中してひとつのことに取り組めてすごい」など「オタク」たちのこだわりや信念を良い印象ととらえる人もいた。「オタク」ではない人たちは「オタク」たちに多少共感はするものの、やはり理解しづらいものがあるために、「オタク」という言葉はおそらく馴染みづらいものとしてとらえられるのだろう。

 ひとつの推測ではあるが、現代の日本の社会では昔より人間の関わり合いがはるかに薄れたために、一人でも楽しめる時間の使い方が多様化・高度化し、「オタク」たちの趣味を作り出した気がする。今後日本の社会でますます増えていくことが予想される「オタク」人口。それは、つまり人間の関わり合いがどんどん希薄になっていくとも考えられる。日本国民全員がもし「オタク」になってしまったら、おそらく人間関係はないものに等しくなるだろう。趣味に没頭できることはすばらしいことであるが、人と関わり合うこともバランスよく行っていくことが必要である。

秋葉原にて外国人に該当インタビュー