結婚の自由をすべての人に

記者:福田有佳 Ayaka Fukuda(16)

日本においても様々なセクシャルマイノリティの権利が叫ばれる時代。日本で同性婚を実現する為に活動されている公益社団法人「Marriage For All Japanー結婚の自由をすべての人に」の代表理事であり弁護士の寺原真希子氏に取材しました。

Marriage For All Japanについて

記者: 法律上の性別が同じカップルの婚姻を法的に可能とする「同性婚」を実現させるにあたって、どのような活動をされていますか。

寺原さん: 私は「法律上の性別が同性である者同士の婚姻を認めないことが憲法違反であること」を問う、国を相手とする訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)の東京弁護団の共同代表と、同性間の婚姻の法制化を求めるキャンペーン等を行うMarriage For All Japan(以下:マリフォー)という公益社団法人の代表理事という2つの役割を担っています。

訴訟では、同性間の婚姻を認めない現在の法制度は憲法に違反するという最高裁の判断を獲得することを目指しており、マリフォーでは、訴訟外の活動として、(1)法改正を求めるロビイング、(2)訴訟のPR面でのサポート、(3)世論喚起のための様々なプロジェクトを行っています。

戸籍制度を覆すものではない

記者: 同性婚を実現するにあたって、日本特有の制度上の課題や文化的な障害はありますか。

寺原さん: 海外と比較して、日本特有の制度上の課題があるわけではありません。日本には戸籍制度がありますが、戸籍制度の存在が同性間の婚姻を認めることの障害になるとの主張は、訴訟の被告である国もしていません。同性間の婚姻が認められれば、同性カップルも戸籍上の家族になるというだけで、同性間の婚姻を認めることで、戸籍制度が持つ機能や意義が失われるわけではありません。

日本と文化的に親和性があると言われる台湾でも2019年に同性間の婚姻が認められるに至っていることも踏まえれば、他の国にできて日本にできない理由はありません。この問題は人権問題であり、制度や文化が異なることは、人権が侵害されている状況を解消しなくてよい理由にはなりません。

日本でも、実は、自民党以外の主要政党は、公明党も含めてほとんどが同性間の婚姻の法制化に賛成しています。日本で同性間の婚姻が法制化できない直接的な理由は、自民党の中に強力な反対勢力が存在するという点にあります。

公益社団法人「Marriage For All Japanー結婚の自由をすべての人に」の代表理事であり弁護士の寺原真希子氏

権利、そして社会的承認

記者:同性婚はなぜ実現されなければならないのでしょうか。

寺原さん: 大きく分けて二つの側面からお話したいと思います。

まず一つ目として、婚姻には沢山の法的な権利や事実上の法的保護が紐づいています。ですので、婚姻できない同性カップルはそれらを一切享受できず、具体的な不利益を日々被っていますので、その不利益を解消する必要があります。

もう一つは、社会的承認の問題です。同性カップルの婚姻が認められていないことは「同性カップルないし性的マイノリティは、異性カップルと同等の法的保護を与えるに値しない存在である」というマイナスのメッセージを、国が日々発信し続けているのと同じです。そのことは、社会における差別や偏見の土壌となり、それらを助長することに繋がります。婚姻制度から排除されるということは、婚姻ができないにとどまらず、人としての尊厳が傷つけられ、自分たちの存在や関係性が社会的承認を得ることもままならないということを意味するのです。

訴訟の原告が共通しておっしゃるのは、自分自身が幼い頃から持ってきたのと同じような辛い気持ちを、これからの世代の人たちに持ち続けて欲しくないということです。今この瞬間も、少なくない子どもたちや若者が、自分たちが婚姻制度から排除されていることで、将来の自分を思い描くことができず、自己肯定感を持てずに、生き悩んでいます。

社会も豊かになる

記者: 同性婚が実現された場合、社会にどのような影響がありますか?

寺原さん: 「同性婚を認めると少子化が加速する」という声を聞くことがありますが、論理的ではありません。異性カップルで婚姻したい人は、同性間の婚姻が認められるか否かにかかわらず婚姻しますし、子どもをもうけたい人は、やはり同性間の婚姻が認められるか否かにかかわらず、子どもをもうけるでしょう。

逆に、性的マイノリティが法制度においても差別されている今の日本社会において、性的マイノリティが100%の能力を発揮することは困難です。同性間の婚姻の法制化は、同性カップルと、実際に同性カップルに育てられている子どもたちが、法的に保護されて幸せになるだけではなく、性的マジョリティを含む社会全体を豊かにするものです。マイノリティが生きやすい社会は、すべての人にとって生きやすい社会であるはずです。

具体的に私たちができること

記者: 今後同性婚が日本で実現されるにあたって、現在想定している流れを今までの活動とともに教えていただけますか。

寺原さん: 訴訟では、同性間の婚姻を認めない現在の法制度ないし現状が憲法に違反するという判決が積みあがってきています。今はまだ下級審のレベルですが、最高裁で違憲判断が下されれば、国会はそれを無視するわけにはいきませんので、法改正が進むことになります。

ただ、本来は、最高裁の判断を待たずに、国会が自ら法改正を行うべき立場にあります。マリフォーが日々ロビイングを行っているのはそのためで、最高裁判断より前に、一日でも早く法改正がなされるよう、訴訟外での各種活動も続けていきます。

*取材は2月2日に行いました。最新情報をマリフォーのサイトでご確認ください。https://www.marriageforall.jp/blog/20240314_tokyo2_hokkaido_w_judgements/

記者: 最後に、婚姻の平等が達成されていないという問題に対して何かしたいと思っている若者に対してアドバイスがあれば教えてください。

寺原さん: まず一つ目として、家族など身近な人との間で、この問題を話題にしていただけたらと思います。世論調査によれば、同性間の婚姻の法制化への賛成割合は7~8割と高い水準にありますが、世代別でみますと、年齢が上がるにつれて賛成割合が減り、また、女性より男性の方が賛成割合が低い傾向にあります。ですので、特に、家族や親戚や知り合いの中の高齢男性に、ご自身が思うところを率直に話してみていただけたらと思います。見知らぬ弁護士に言われるのと、自分の子ども、孫、あるいは身近な知り合いである若者から言われるのでは、印象が全く違ってきます。価値観が合う仲間内だけでなく、普段あまり考える機会がなさそうな人たちに、考えるきっかけを作ってもらえたらと思います。

二つ目としては、マリフォー国会メーター*を利用して、是非、国会議員に手紙を書いていただけたらと思います。手紙は誰でも送ることができ、成人である必要も有権者である必要もありませんし、匿名でも構いません。国会議員の中には、自分の地元に住んでいる人から手紙をもらった事が、この問題を考えるきっかけとなり、賛成へと意見を変えた人もいます。マリフォー国会メーターは、選挙の際に投票の材料の一つとして役立つほか、選挙以外の時期にも、また、選挙権を持っていない年代の人でも、手紙という形で国会議員に意見を直接伝えるという形で利用でき、国政へのダイレクトな意思反映のツールともなっています。

*マリフォー国会メーター:国会議員や国政選挙の候補者の結婚の平等(同性婚)に対する考えを調べることができるウェブサイトです。https://meter.marriageforall.jp/


取材後記: 取材を終えて、私は日本における同性婚の実現がより現実味を帯びてきたように感じました。寺原さんがおっしゃったように、私達中高生もマリフォー国会メーターから手紙を書く事で、政治家に対して意見をすることが出来ます!皆さんもぜひやってみてください。

自己紹介: こんにちは。記者である私、Ayakaは現在フィリピンのセブ島にて留学中です!海や砂浜が美しく、年中常夏のフィリピンですが、国外から来た私の目を引くのはやはりその経済格差です。スラム街、ストリートチルドレンなど、ここフィリピンでは貧富の差をダイレクトに感じられ、自分も何か現状打破に対して行動を起こしたいと思わざるを得ません。私も今後ボランティアなどに取り組みたいと思いました。