クジラの不思議がいっぱい!親子で学ぶ解体図ワークショップ

記者: Haruka Inami (10)

2024年3月17日に梅田、グランフロント大阪のナレッジキャピタルで開催されたSpringX超学校「かさねて発見!クジラのふしぎーープラ板でクジラの解体図をつくろう!」に参加した。太地町立くじらの博物館 副館長 / 学芸員の中江環さんからクジラの種類、特徴、違いについて学び、クジラの解体図のキーホルダーを作った。初めて知ったクジラの真実に驚くことばかり!

セミナーの様子

 ナレッジキャピタルの会場に入ると、机は3つあり、各テーブルに4、5人の親子がいた。

 中江さんはまず、会場にいる親子に向かって「クジラというと、ほとんどの人はこういうクジラをイメージすると思う」とスクリーンに青いクジラを映した。

「これはクジラだと思いますか?」

 あごには黒い線(=うね)が何本も描かれており、頭からは二つに分かれる、小さな噴水(=噴気)のようなものが描かれていた。中江さんの「これはクジラだと思いますか?」という質問に、参加者たちはうなずいていた。しかし、このイラストのようなクジラは存在しないと言って、次に、中江さんは二匹の別のクジラの写真をスクリーンに映した。

 一つ目のクジラは一直線に上に向かって水を吹き出しており、あごには「うね」と呼ばれる線があった。一方、二つ目のクジラが吹き出した水は宙で二手に分かれており、あごには「うね」がなかった。二匹のクジラは、それぞれ頭から出てくる噴水(=噴気)と、あごにある「うね」の様子が少し違っていたのだ。中江さんによると、この二つの写真のクジラは違う種類らしい。この二つの写真とイラストを見比べると、ほとんどの人がイメージしているクジラのイラストは実は偽物のクジラなのだ。その後、クジラの分類についても語ってくれた。どうやら、クジラは二つの種類、歯が生えている種類と、歯の代わりにクジラヒゲが生えている種類に分けられるらしい。

クジラの歴史を学ぶ

 中江さんはクジラの歯とヒゲの実物を一人ずつに回して見せてくれた。ヒゲは約30cmくらいで、曲がった三角形のような形をしていた。歯も同じくらい大きかった。先は少し尖っていた。

実際のクジラの歯

 次に、クジラとイルカの違いについて話してくれた。実は、この二つの生き物の違いはほとんどないらしい。「違いは大きさぐらいで、その他には特に違いもない」と中江さんは語っていた。この事にはとても驚いた。正直、体の仕組みやら、食べるものやら色々な違いがあるかと思っていたが、違いが大きさだけとは予想外だった。
 スライドショーの最後あたりでは、解体図とは何か、そしてクジラの歴史について説明してくれた。中江さんによると、昔は「*鯨一頭七浦潤う」といわれていたように、日本ではよくクジラが取れていて、学校の給食にもよく出てきていたそうだ。私は今までにクジラを食べたことがないので、衝撃的な情報だった。最近はクジラが取れなくなり、高級品になっているらしい。

*「鯨一頭七浦潤う」(くじらいっとうななうらうるおう)とは:一頭の鯨がとれると、七つの浦がうるおうという意味。 獲物が大きいとその恩恵を受ける者は多くなるということ。

キーホルダー作りと参加者に取材

 解体図のことも習った。解体図とは、生き物の体の仕組みや見た目がわかるように内臓や骨が見えるようになっている図のことだ。講義後に、子どもたちでクジラの解体図を作り、キーホルダーにした。クジラの内臓、骨、そして外側の見た目をプラ板の上で親子でなぞり、色を塗り、トースターに入れ、完成させた。骨をなぞるのがとても難しく、あまりにも細かすぎて、なぞり終えた頃には手がブルブルと震えていた。 

 キーホルダー作りが終わると、参加していた子ども達は満足そうに自分が作ったキーホルダーを眺めていた。私は、同じテーブルに座っていた大阪市内の二組の親子にワークショップの感想と受講した理由を聞いてみた。二組の子ども達はどちらも「すごく楽しかった」と嬉しそうに語っていた。受講した理由については「動物が好きだから」「親に勧められたから」と話していた。

中江環さんに取材

 ワークショップ終了後、中江さんにクジラの魅力的なところや仕事のやりがいなど、色々な質問をした。

記者:クジラの魅力的なところはどこですか?

中江さん:クジラの事をたくさん学んでいるのに、それでもまだまだクジラの事をわかっていない事がたくさんある、というところが魅力的です。 

記者:仕事でやりがいがあると思うところは?

中江さん:私の仕事は、こうやって子ども達や大人にもクジラのことを教えてあげる事だけど、教えた後に、質問をしてきたり、楽しかった、という感想をもらったときが一番嬉しいです。

記者:クジラを食べたり、殺したりするのに反対する活動が増えてきていますが、この問題についてどう思いますか?

中江さん:「クジラを殺したらダメ」と思う人の考えも尊重しなければいけないし「クジラのお肉が好き、食べたい」という考えの人も尊重しなければいけない。もちろん「どっちでもいい、興味がない」という人もいる。私にとって大事なのは、クジラのことを知らない人、興味を持っていない人にクジラの事を教えてあげ、クジラの事をたくさん学んでもらうことです。今日みたいに、色々な人にクジラの事を教えているのも、クジラに興味を持ってほしいからです。

最後に、中江さんから逆に質問をされた。

中江さん:もし、クジラにインタビューするなら何を聞きますか?

記者:クジラに、自分が食べ物として殺されていることをどう思っているか、食べる時に間違って海水を飲んでしまったらどうなるか、と聞きたいです。

中江さん:私は、人間の事をどう思っているか?と聞きたいです。

 もし私がクジラなら「人間は海を汚しすぎだよ。もっと海を大切にして」というのではないかと思った。

太地町立くじらの博物館 副館長 / 学芸員の中江環さん

取材後記: 中江さんのワークショップでクジラという生き物について興味がわくようになりました。キーホルダー作りも楽しかったし、クジラについての意外な情報を得ることができて勉強になりました。中江さんからのリクエストがあったので、このワークショップをさらに楽しむために、会場の壁にクジラについてのポスターや写真を貼ったり、クジラの模型をさらにたくさん持ってくるのはどうですか、と提案をしました。

自己紹介: 最近ガラスペンとブラッシュペンで描くハンドレタリングにはまっています。かっこいいフォント字を特殊なペンでなぞって、字が綺麗に描けるように頑張っています。いつか教科書の中に書かれてある字の綺麗さ並で描けるようになりたいです。