星美ホームの取材を通じて
記者:尾崎惺 Satoru Ozaki (17)
*修正箇所がありましたので、2024/11/14に再掲しました。
私(記者)はアメリカ留学中に貧困家庭を支えるボランティア活動に参加し、地域での共助文化の大切さを実感したことがある。帰国後、日本で状況としてまずは「公助」の実態はどうなっているだろうかと東京都北区赤羽台にある児童養護施設、星美ホームを取材させてもらった。副施設長の立入聡氏によると、地域住民の協力やボランティアの支えのもと、多様な活動を展開しているそうだ。児童養護施設が、地域全体と協力して子どもたちや保護者を支えている現状について取材した。
児童福祉の世界は、時代とともに大きく変化してきた。立入氏によると、戦災孤児救済から始まった社会的養護の事業は社会的養育へと移行を進めているという。
正直なところ、取材前は児童養護施設に対してあまりよく知らず、ネカティブなイメージを持っていた。しかし、実際に星美ホームを訪れてみると、その印象は大きく変わった。ここは児童養護施設の中でもスタッフ、建物、設備を含め様々な条件に恵まれており、施設の雰囲気は明るく充実し、子どもたちも楽しそうだった。
立入氏によると、「児童虐待の相談対応件数は増えているが、虐待死に至るケースは横ばいだとなっており、未然に防ぐ取り組みが徐々に浸透してきている印象がある」という。また、平成28年の法改正により、23区(特別区)が児童相談所を設置できるようになったそうだ。「区が担当すると、担当者一人あたりの件数が減り、きめ細やかなケアができるようになった」とのことだった。
施設での生活
星美ホームは、カトリック団体が運営する児童養護施設だ。現在の定員は94人(2024年7月時点)で、6人を1グループとする小規模グループケアを実施し、できるだけ家庭に近い養育環境を提供している。児童虐待の相談対応件数の増加に伴い、一時保護される児童の数が増えている。そういった児童は比較的短い期間、施設を利用し、家庭環境が安定したら、家に帰っていく。食事は、施設で暮らす幼児のグループ、子育て短期支援事業の利用者は給食、そのほかのグループは担当職員が児童の目前で調理する。食事の提供は一般家庭に近い形で行われ、一般家庭に近い環境を作っているのだ。高校生には小遣い(6,000-7,000円)も出る。スマートフォンの貸し出しやアルバイトが許可され、塾の費用も中学生は国や東京都から補助される。「普通の生活をしてもらうことが方針だ」と立入氏は強調する。もちろん、何かトラブルが起きるケースはある。特にスマートフォンに関する問題は多く、高額な課金トラブル等が発生した時には、問題が解決するまで使用不可といった対応をとることもあるそうだ。これは一般家庭も同じだろう。
また、星美ホームでは子供たちの体験を重視しているそうだ。「アウトワードバウンド(Outward Bound)*の考え方をベースに、キャンプや海外ボランティアなどの体験を通じて、信頼関係を築き、レジリエンス**を回復させる」と立入氏は説明してくれた。
取材中、私はプロのダンサーが子どもたちにダンスを教えるイベントに参加する機会があった。約30人の子ども達が参加し、大人も同じ数か子どもよりも若干多い人数が手伝いに来ていて、とても充実した環境でのレッスンだった。子供達のはしゃぐ姿は、私が小学生の頃に経験したものと変わりなく、むしろそれ以上に楽しそうであった。
*アウトワードバウンド(Outward Bound):アウトワードバウンドとはドイツ発祥の考え方で、様々な野外活動を通して困難を乗り越え自ら成功体験を得る活動の総称であり、”Outward bound”は船が出航1日前に掲げる旗を意味する。
**レジリエンス:ここで言うレジリエンスとは心理学で回復力や復元力など自発的に治癒する力のことをいう。
進学支援と卒業後
星美ホームでは18歳以降、高校卒業後も措置を延長し支援を続けること、大学や専門学校等更なる高等教育への進学を施設の方針として掲げている。国の高等教育の修学支援新制度や各種奨学金制度等、制度が充実しており、進学を後押しすることができるようになったことが大きい。大学進学のための塾の費用も国や東京都から一部補助される。
驚いたことに、この施設では留学プログラムがあり、子どもたちはフィリピンなどに行く機会があるという。また、キャンプをしたり、100名山を巡ったこともあったそうだ。これらを実現させるために寄付を集めたり、施設の運営費をやりくりし、財源を確保しているそうで、さまざまな工夫がされていることを知った。
「時代の変化は目まぐるしい。『今の施設の子達はいいですね』と言う卒業生もいる。昔は生活のルールを守らせることを優先していた。私自身が強い番犬みたいな職員だった・・・」と何十年も前の現場では今では考えられない厳しい対応をしてきたと振り返った。この10年は退所者支援に力を入れており、30歳前後の退所者と食事をしながら近況報告をし合うこともあるそうだが、そんな時は「謝ってばかり」だとおっしゃっていた。
地域社会との連携
少子化が進む中、児童養護施設が培ってきた子供の養育スキル、設備やサービスを提供する時代になっている。例えば、子育て短期支援事業(子どもショートステイ)等、保護には至らないが困難を抱えている家庭が利用しやすい仕組みを児童養護施設が担っていく必要性がある。星美ホームでは1クール6泊7日の子どもショートステイを格安(送迎付きで2000円)で実施している
立入氏は「少子化が進む中、この施設は地域の人々にも還元する時代になっている。例えばショートステイの提供など、困難を抱える人々が利用できる仕組みを整えている」と児童養護施設の役割の変化について教えてくれた。
特に印象的だったのは、星美ホームでは1週間や2週間の短期預かりを行っている点だ。しかし、一般的には親が子どもを短期間預けることに罪悪感を感じることが多いようで、立入氏は、「子どもの事情を考えるのはもちろんだが、親の事情も理解し、サポートすることが大事だ」と強調した。この「親の事情も理解しよう」という視点は、私にとって新鮮だった。
私がいたアメリカの高校では貧困家庭のサポートやファンドレイジングが高校のプログラムに組み込まれていた。日本でもそのような文化があれば良いのではないかと思ったこともあるが、日本では格差がアメリカほど大きくはなく、生活保護も整っているので、ボランティアや寄付のニーズが違うかもしれない、と帰国後に考えを変えた。公的責任において児童を保護し、社会的に養育していくとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行ってきた星美ホームだからこそ、これからの時代のニーズに応えるべく、子ども家庭福祉の中では見えづらかった「自助」「互助」「共助」といった包括的ケアシステムの中心となっていくことが重要である。新たな児童養護施設のニーズは多岐にわたっており、国の少子高齢化問題を始め、子ども家庭福祉分野に留まることなく、幅広く貢献していくことが期待される。
よく「児童保護施設」と聞くと、メディアの影響のせいか、何かシビアな、深刻な社会課題に根付いてそうだ、というような印象を抱いてしまう。しかし、今回の取材で私が目にした光景は、いわゆる一般家庭と相違ない日常であり、子供達の笑顔であった。また星美ホームの公助は共助に繋がり、そしてそれが地域全体のコミュニティー形成につながっていたことは間違いない。その意味でこの施設は”先端”であった。読者がこの記事を読み、もし近くにこのような施設があれば、ボランティアなどでぜひ一度関わりを持ってみようというきっかけになれば幸いである。
*本記事は一部Chat GPTを利用しました。
自己紹介: 私は数ヶ月前に一年間のアメリカ留学から帰国した高校3年生である。米国滞在時にみた日本との違いに興味を持ち、両国を様々な点で比較した取材をしたいと思い、今に至る。現在受験期であり、できれば海外大学に行きたいと思っているが、どうなるかは分からない。