記者: 毛利真由(17)
日本のアニメーションは今、日本のみならず世界中で見られている。大きな注目が集まる中、アニメに命を吹き込む声優という仕事に人気が集まり志願者が増えているが、簡単に成功できるものではない。今声優を目指す人はどのような気持ちでこの職業を目指すのか、なぜ声だけで演じることを選んだのかを探ってみた。
声優になるためにはふつう専門学校や養成所に入り基礎から学ぶ。そこで、まず専門学校東京声優アカデミーの教務部で担任をしている東さんに話を聞いた。声優になるためには基礎力、技術力、コミュニケーション力、個性が必要であると東さんは語る。基礎力とは主に滑舌・発声・イントネーションなど日本語を正しく話せる力のことを指す。感情を出せる技術を磨き、より良い演技をするため現場の雰囲気づくりも重要で、そこでコミュニケーション力が必要となるそうだ。そして増加する声優の中で抜きんでた存在となるために、声質や見た目などの個性も必要だという。
声優はアニメの声や吹き替えのイメージが強いが、今ではラジオやテレビ番組のナレーションの仕事も行うようになっている。以前は裏方としてアニメを支え、本人の姿が出ることは少なかった。それがイベントへの出演や歌手活動など声優の仕事以外にも頻繁に登場するようになり、本人が認識される機会が増えた。活動の幅が広がったのは、アイドル化する声優が増えてきたことが原因の一つとして挙げられると東さんは言う。アイドル化が進み人前に出ることで声優個人の人気が高まり、CDを出す歌手活動などにもつながったようだ。また東京声優アカデミーに通う生徒の森倉智奈央さんは、自分のキャリアアップにつながる歌などには挑戦してみたいと語る。声だけで演じることについては、お金では買えない演技の楽しさがあり、人に夢を与える仕事だからこそ苦労してもやっていきたいのだという。
東京声優アカデミーを卒業して実際声優になり、賢プロダクションに所属する小堀幸さん(『ハピネスチャージプリキュア!』ぐらさん役、『FREE!』橘蘭役 など)にも取材に行った。賢プロダクションでは二年間の養成期間があるが、一年目で生徒40人のうち半数が落とされる。二年間の養成期間を終えてプロダクションに所属できるのは数人しかいない。声優になるには一筋縄ではいかず、運と努力が必要なようだ。小堀さんは「厳しい道のりだからこそ、その中で生き残ってやっていきたい」と語った。声優という仕事の魅力は、声だけでこどもや外国人、動物にもなれ、「様々な人生」を歩めるところだという。自分以外のものになり、アニメを通して見た人がそれを喜んでくれて何かを学んでくれることがこの仕事のやりがいであるとも語った。
声優という職業はアニメブームをきっかけに増加し始めたことが分かった。声優になるため専門学校に通う森倉さんも、声優になった小堀さんも「声だけで演じるからこそ夢を人に与えられる」と、この仕事の魅力を語った。しかし、役のオーディションに最終選考まで残ってもそこで落ちてしまったらそれで終わりである。二等賞などない。そんな厳しい世界でも輝こうとする声優と志願者たちに注目していきたい。