曽木颯太朗(15歳)
2007 年の通常国会で憲法改正手続について定めた国民投票法が成立した。この法律の注目すべき点は参政権の一つである国民投票の投票権を 20 歳以上ではなく、 18 歳以上の国民に与えていることだ。これに伴って現在 20 歳となっている成人年齢を引き下げることが検討されているそうだ。
成人年齢が 18 歳というのは世界の趨勢で、 20 歳という日本は少数派だ。選挙権を与えることで 若い世代の政治への関心が高まる ことを期待する声もある。しかし、成人年齢を引き下げることは参政権を得る年齢のみならず、喫煙や飲酒が可能な年齢などの引き下げにもつながってくる。また成人するということは一人前の大人になるということであり、社会に対して義務と責任を負う必要がある。
周囲を見ていると、 18 歳で義務を果たすことはできるのか、また政治について深く考えずに選挙権を行使してしまうのではないか、と いう 疑問が浮かび上がった。
まず、 政府の成人年齢引き下げについて検討する「年齢条項の見直しに関する検討委員会」委員長の的場順三内閣官房副長官にお話をうかがった。成人年齢引き下げに伴う飲酒・喫煙年齢などの引き下げについて「全てを必ずしも変える必要はない」としたうえで、「現行法制で未成年に有利か不利かなどを考えて検討する」という。また政治について学校で 現在よりも 詳しく教えないのかと尋ねたところ、「今もきちんと教えているが、さらに力を入れる必要もある」と答えた。
こうして聞いてみると政府が年齢引き下げに伴って予想される弊害を極力抑えようとしていることが分かった。しかし、 18 歳に成人年齢を下げて僕たち子どもには一体どういうメリットがあるのだろうか。一定の配慮はあれども、成人するからには大人としての責任を果たさなければならず、当事者として は 無責任な言い方をすれば「いい迷惑」である。
僕たちは、 18 歳への成人年齢引き下げを積極的に推進していた民主党憲法調査会長の枝野幸男衆議院議員に も インタビューを 行った。「成人年齢が 18 才というのは世界的な流れだ。加えて情報化が進んだ社会で、子どもが大人同様に情報を得られるようになり、昔より早く成熟しているのも理由のひとつ」と枝野さんはいう。 そして「本来ならば義務教育が終了する 16 歳で成人が望ましいが、社会全体に“高校生は まだ 子ども”だという強い観念がある。 18 歳に選挙権を与えることは、あまり深く考えず人気投票になりかねない懸念もある。もっとも年を重ねている人がしっかり考えて投票しているかどうかは分からないが…」ともいう。
権利と義務の関係については 、 「成人年齢を引き下げれば少年法も改正し、大人と同じような罪を問うことになる」のでちゃんと義務も備わっていると強調した。
枝野さんはインタビューを通して年齢の引き下げは子 ども たちのためではなく 、 社会全体のためだと強調していた。歳をとれば目先の利益に目がいってしまうが、若ければもっと長い目でものを見られるというのである。
成人年齢の引き下げについていろいろな話や調査を通して、いかに有益なのかはよく分かった。引き下げに 向 けた準備も進行している。しかし、やはり当面は現行維持に留まったほうがよいと思う。国民投票法は施行まで 3 年間の準備期間が設けられるが、その間に引き下げを周知し、その結果生まれてくる権利と義務について学ぶにはおそらく時間が足りない。もっといえば責任感のある人間として育てなければならないのだ。僕自身現在それほど責任感があるとは思っていない。 18 歳までの残り少ない時間で成人の権利と義務を学んで、しっかり理解できるようになるとも到底思えない。引き下げには反対しないが、子ども を いかに教育するかが今後の課題だと思う。
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国民投票法が2007年衆議院参議院で可決され、5月18日に公布された。この法律によると18才以上が投票権者となる。 いずれ国政選挙の投票も18才以上になるかもしれない、ということを前提に10代の若者が話し合った。