宮澤結(17)

 フードマイレージという言葉を知っているだろうか?
 これは食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標のことだ。この指標によって食料の輸入が地球環境に与える負荷を把握することができる。例えば、さけ・ますの輸入先1位はチリだ(2010年月/貿易統計)。チリはほぼ日本の裏側に位置する。地球を2分の1周離れていると考えると、さけ・ますを輸入するために沢山の二酸化炭素が排出されていることがわかる。

私たちの住む日本のフードマイレージの値は食料総輸入量約5800万t×平均輸送距離約15000kmで、なんと世界上位の9002億t・km(トン・キロメートル)だ。これはアメリカの約3倍にあたる(2001年/農林水産政策研究所)。

毎日の生活の中で、どんな人にもかかわりのある食事。だからこそ、食からできる環境対策があるはずだ。フードマイレージの研究を続けている農林水産省統計部統計企画課数理官の中田哲也氏と、環境カウンセラーの中村早苗氏(金沢エコネット)に話を聞いた。

 中田氏は農林水産省に入省後、2001年から2年ほど農林水産政策研究所に勤務し、当時所長であった篠原孝氏の下で初めてフードマイレージの研究に携わった。フードマイレージという言葉は、もともとはイギリスの消費者運動家ティム・ラング氏が提唱した「食料の生産地から食卓までの距離に着目し、なるべく近くで取れたものを食べよう」という消費運動、フードマイルズ運動に由来するもので、篠原氏の造語だ。「フードマイレージという名前にした理由は2つある」と中田氏は語る。

農林水産省の中田哲也氏

1つ目は航空会社のマイレージプランなど、日本人にとって“マイレージ”という言葉がなじみやすかったこと。

そして2つ目は航空会社のマイレージは貯まると得をするけれど、フードマイレージは貯まると環境に悪いということをかけたという。

何のためにフードマイレージを計測したのかを尋ねると、「身近な食事を地球環境問題と結びつけて食事を見直すきっかけにしてほしい。フードマイレージは厳密ではなく、あくまで1つの指標にすぎないが計算が簡単だからこそ消費者も理解しやすいし身近にとらえやすいはずだ」と熱く語った。

日本人は食べ物に贅沢で、便利さに慣れている、と中田氏は指摘する。
中村早苗氏もこの意見に同調する一人だ。
中村氏は環境NPOのメンバーで、料理講習や講演会などを企画し、食と環境について知ってもらう活動をしている。また家庭でも省エネを成功させ、「省エネコンテスト」で経済産業大臣賞を受賞した。

環境カウンセラーの中村早苗氏

「冷蔵庫の中身は、知らず知らずのうちに増えていくもの。でも冷蔵庫がなかった頃の人々は、食材を新鮮なうちにいただき、収穫期にとれたものは太陽のエネルギーで干して冬を越していた.」と中村氏は言う。確かに現代の豊かな日本では少し外を歩けばコンビニやスーパーマーケットがあり、沢山の飲食店もある。だからその原料や食材がどこで作られたのか、どんな人が作っているのかという考えはなかなか浮かばない。

私たちが食事と環境問題のためにできることを以下に列挙してみる。
1つは食料を買うときに、どこで作られたかを意識すること。
そしてなるべく地元あるいは近いところで作られたものを買うようにする。すなわち、フードマイレージが小さいものを意識して買う。
2つ目は旬のものを食べること。加温したハウス栽培などは、生産時にエネルギーを多く使うためエコではない。旬のものはおいしいし、身体によく、価格が安く、環境にもよい。
次に、食べ物を無駄にしないことだ。フードマイレージ以外でも廃棄物を出すことは環境に悪い。
最後にもっとも大切なことは、食に関する環境対策を楽しみながらおこなうこと。「~しなければいけない」ではなく「~しよう」と考えることで、より楽しく積極的に対策できる。

食事は誰もがする。だからこそ一人一人が環境対策を意識すれば大きな成果が得られると思う。
環境を意識した食事を、今日から始めてみてはどうだろうか。