三崎友衣奈(18)

 鳩山首相が9月に出した「主要各国の参加の上での温室効果ガス25%削減」に対する反応の多くは「歓迎」であった。一方であまりにも厳しすぎると、これを批判してきたのが日本の経済界である。では、産業の一つとして大きな役割を果たす電力会社は今回の日本の目標についてどう対応していくのだろうか、東京電力に聞いた。

 東京電力では、発電の効率性、使用時の効率性、そして技術の向上という3つの面で温室効果ガス削減に向けて動いている。

 発電時は、 CO2 を排出しない原子力発電や、石油よりも CO2 排出量が少ない液化天然ガス( LNG )の使用が東京電力全体の7割近くを占める。また火力発電の熱効率を上げたり、最新技術によって石炭からの発電を高効率にしたりという取り組みを推進している。

 電気の使用者、特に若者への呼びかけでは、教育に重点をおいている。生徒に対してだけではなく、教師も知識を高めて正しい意識を持ってもらうのが狙いだ。教育は効果がでるまでに長い期間がかかるが、無駄なことではないという考えに基づいて、他社よりも率先して活動を行っているという。

 技術の面では、ヒートポンプという技術を使用した「エコキュート」を開発している。これによって投入する電気エネルギーより3倍~6倍多いエネルギーをつくることができるそうだ。また電気自動車やそれに伴う急速充電器の開発も行っており、本格的な使用に向けて動いている。

 このように活発な活動を実践している東京電力だが、前政権の温室効果ガス 2005 年比の15%削減から一挙に 1990 年比25%削減 (2005 年比 30 % ) という目標を掲げた鳩山政権について、どう考えているのだろうか。

  「我々は、決して反対はしていない」。環境部国際環境戦略グループの高橋浩之氏はこう強調した。会社として、低炭素社会にむけてビジネスを変えていくことについては前向きに捕らえているそうだが、懸念もあるという。日本の武器ともいえる先進的な技術に関してだ。高橋氏は「日本として世界に貢献できることは高度な環境技術を世界へ輸出することだが、25%削減目標はその芽をつぶしてしまうのでは」と語る。つまり、環境に配慮して作る日本製品はコストが上がるため、それがいくら地球に優しいと謳っても、環境に配慮していない国の安価な製品の方を消費者が購入しかねないというのだ。

 確かに、「鳩山イニシアチブ」は評価が高かった一方で、あまりにも飛躍しすぎた目標数値や、具体策の不透明性が指摘されてきた。しかし、25%削減という一見大きな数値を「日本をいち早く先進的なエコ国家にする」という宣言と捉えると、高い目標数値は逆に日本のさらなる技術向上へのきっかけになるとも思える。

 多くの企業が製造と環境対策とを両立させる経営に向かっていくので、高橋氏が「消費者にもコスト負担を理解してほしい」というように国民の意識が高まれば日本の技術が損に終わることはない。

 そのような理想的な国家を目指す中で、「 CO2 の排出量が多い東京電力だからこそ、逆に解決策がたくさんある企業となってほしい。


25%削減に向けて企業の取り組み

建部祥世(18)

 政権交代により掲げられた、 2020 年までに温室効果ガスを 25% 削減( 1990 年比)するという目標は、麻生政権時に出された 15% 削減( 2005 年比。 1990 年比では 8% )という数値のおよそ 3 倍にもあたる。鳩山政権のこの数値目標は世界各国から拍手喝采を浴びたものの実際に達成できるのかどうか、国内ではまだまだ賛否両論がある。

 この目標を達成するにあたり欠かせないのが産業界の協力である。日本の温室効果ガス排出量を見てみると、産業部門からの排出量は 1990 年から徐々に減少しており、現在ではおよそ 13% の削減に成功している(東京電力株式会社資料より)。しかしそれでもまだ産業部門が占める割合は、日本全体の排出量の約 4 割にも上り、産業界はこれからの大幅な温室効果ガス削減成功の鍵を握っているのである。

 では、その産業界は今回の数値目標をどのように受け止め、今後どのような活動に取り組んでいこうとしているのか。産業界の中でも特に、様々な温室効果ガス削減活動や環境保護活動を積極的に行っている東京電力に話を聞いた。

東京電力の高橋浩之氏

 環境部国際環境戦略グループの高橋浩之氏は 25% 削減というこの目標について、「反対はしていない。ただ産業界全体としては厳しい、重たい数値であると受け止めている。、ビジネスを、環境に配慮した形にシフトしていくことが大切」と前向きな姿勢を示した。環境問題の影響を直接受ける私たち若者が自分たちの将来に不安を抱いているということに対しても、「不安になることはない。日本を含めた先進国等ですでに使用されている排出削減技術を国際的にさらに普及させていくことでかなりの効果が期待できる」と語ってくれた。

 しかし同時に「日本の高度な技術を国際的に普及させていかなければならないという産業界の役割に責任感を感じている」という。技術輸出と、世界との連携は簡単なことではないが、もしそれが実現したならば、より効果的な世界レベルでの温室効果ガス削減ができるのではないかと、私たちの将来に少し希望を持たせてくれた。

 東京電力は産業界の中でも特に多くの環境保護活動に取り組んでいる。重点を置いているのが環境教育だという。学生向けの出前講座や教職員を対象とした「環境・エネルギー教育研修会」の実施など、次世代を担う若者たちの育成に力を注ぎ、また「東京電力自然学校」という自然体験活動など、体を使うことによって全身で自然の雄大さや大切さを実感してもらう事業も展開している。これらの環境教育について高橋氏は「効果は出にくいが、草の根的なコミュニケーションを作っていくことが大切」と、持続的な活動の重要性を述べていた。

 最後に日本社会に対して、「『規制だからやる』のではなく、自発的に取り組んで欲しい。環境問題などの国際的な問題を深刻にとらえ、意識改革と行動改革を起こすことが大切。企業側の意識も上がってきているので、国民の人々にもっとサポートしてもらいたい」と、低炭素社会実現に向けてのメッセージを送った。

 「環境に優しい」や「エコ」を売りにする企業がどんどん増えてきており、企業レベルでの環境への取り組みも活発になってきている。私たち国民、ひとりひとりができることは企業の取り組みをサポートし、監視し、自らも様々な活動に積極的に参加していくことであろう。


東京電力の取り組み

富沢咲天(14)

 私たちが日々日常的に使っている電気は、作られる様々な過程でCO 2 をたくさん排出している。地球温暖化に向けて電力会社はどのような環境対策を行っているのだろうか。

 今回は東京電力株式会社にインタビューした。

 まず初めに鳩山政権が掲げた温室効果ガス25%削減について電力会社としての反応を聞いてみた。「 2020 年までに温室効果ガス25%削減という目標を民主党が掲げることは予想していたが、この目標は経営の根幹に関わるので正直重たい数字だ」と環境部国際環境戦略グループの高橋浩之さんは言う。その理由は、CO2排出の少ない新たな発電所の計画・建設には時間がかかり、運転が始まるまでに少なくとも10年は必要だからだ。電力会社にとって時間が足りない。また、25%削減するためにはコストがかかる。だから会社の反応としてはあまりよくなかったらしい。

 しかし高橋さんは、この目標に反対なわけではないと強調する。。「削減に取り組むのは世界の流れであるので、前向きに取り組みたい。」と語った。

 では東京電力が実際に取り組んでいることは具体的にどんなことか。まずCO2排出量が多い火力発電を減らし、原子力発電を増やす。石炭は安く手に入りやすいが、同じ火力発電でも石炭の2分1しかCO 2 を排出しないLNG(液化天然ガス)の使用を増やすことでこれから貢献が期待できるという。他にもヒートポンプ(エコキュート)の導入など効率のよい機器の開発・普及に取り組み、CO2削減のための技術開発に努めている。

 リサイクルの点では、2010年までに産業廃棄物のリサイクル率100%を目指すそうだ。古くなった電柱は道路の土盤材に、水力発電などで取水路に付着した貝類は肥料やセメントの原料に、電柱に取り付けられている碍子(電線などから電気を絶縁する器具)は陶磁器部分を焼き物や路盤材に、金属部分は鉄鋼の原料に利用するなど力を注いでいる。

 東京電力といえば、アニメなどの楽しい内容のコマーシャルが私たちにとって身近だが、そのほかにも未来を担う子供たちに環境問題やエネルギーに関心を持ってもらうため様々な環境教育を行っているそうだ。各地の小中学校で東京電力の社員が講座を開催したり、自然観察会や自然体験、食育活動などのイベントも開催している。大学生には環境活動コンテストというイベントをNGOと一緒に企画・運営をしているそうだ。

 日本が排出している温室効果ガスの量は世界全体の3.3%だそうだ。だから高橋さんは「日本だけで削減しても他の国で削減が進まなければ温暖化防止の効果はでない。

 日本はとても高い環境技術を持っているのだから、その技術をどんどん外国に伝えなければいけない。今が国際的に貢献できるチャンスだ」と語った。

 「温暖化が深刻化するのを防ぐために、日本は環境に対してコストを負担することを受け入れる社会にならなくてはいけないと思う。。安全でCO2排出の少ない電気を安定して供給するにはコストがかかり、これは電気料金が高くなることを意味する。。それらを国民に納得してもらうためにも、政府は情報を広く国民に知らせてほしいし、国としてどういう社会をこれから目指すのか、国民をまきこんでもっと議論をしてほしい」と高橋さんは言う。

 私は家の毎月の電気料金がいくらかかっているのかも知らない。「冬は暖房代がかかって大変」と母は言う。もし今の電気代が倍になったら。あるいは 3 倍や 4 倍になったら、国民はみんな受け入れられるのだろうか。どんどん設備投資をしてCO2を減らすという理想と、そのための重いコスト負担の現実は私たちにどう影響するのだろう。それでもやはり、将来のために私たちは選択しなければいけない。