村上類(16)
スマートフォン等で楽しむ定額制音楽配信サービスが急増する今、レコードが改めて人気を博してきている。なぜ一部の音楽リスナーはレコードという音楽媒体を選ぶのだろうか。レコード最盛期の時代から強く支持されているディスクユニオンのお茶の水駅前店の店長宇都野潤さんと、RECORD STORE DAYを日本に導入してブームをつくったNPO法人ミュージックソムリエ協会副理事長でRECORD STORE DAY JAPAN事務局の吉川さやかさんに取材をした。
ディスクユニオンお茶の水駅前店の店長の宇都野さんによると、レコードはジャンル問わず売れており、またお客さんの7割は男性だそうだが女性も最近は増えていて、取材当日も若い女性の姿がちらほら見られた。
実際に自分の聞きたいレコードを探しているお客さんに話を聞くと、聴き始めた年代はそれぞれバラバラなものの、口をそろえて音に良さを感じているとう。またジャケットのデザインやレコードのみで聴ける音源など、音楽自体のあたたかさを楽しめるところに魅力があるようだ。
そしてレコードの売り上げが伸びている要因の一つとなっているのは、RECORD STORE DAYの存在だと宇都野氏は話す。特に昨年からは、年二回あるRECORD STORE DAYになるとお店がとても盛り上るようになった。
その事務局の吉川さんによると、日本で本格的に始まったのは震災があった2011年からで、アメリカのヒップホップグループBeastie BoysがRECORD STORE DAY当日の売り上げをRECORD STORE DAY JAPANを通して日本赤十字社に寄付したことがきっかけだそうだ。現在世界20数か国にまで広がっているRECORD STORE DAYは、どの国でも共通している身近な街のMUSIC SHOPがなくなりつつある現状に危機を覚えたレコードストア店員の呼びかけに、ポール・マッカートニーやMetallicaなどの著名アーティストが反応し、貴重な限定アナログレコードを販売し始めたことが世界中に影響を与えている。
日本でもRECORD STORE DAYが盛り上がるようになったのは、そのような海外での流行に敏感な若者がインターネット等で知ったことにも理由があると吉川さんは話す。またアーティストが、アナログレコードならではの音のふくよかさや表現をより求め、若いアーティストがアナログレコードを出すようになった。すると当然ファンの人はアナログレコードを支持するようになったのだろう。
取材の中で宇都野さんも吉川さんも語ったのは、レコードをブームで終わらせたくないということだった。スマートフォンのようにどこでも楽しむことはできないし、A面B面をひっくり返すといった動作が必要なレコードだが、音楽を楽しむ時間がないと感じている人は、あえてレコードで音楽に本気で向き合ってみるのもいいかもしれない。今は音楽を聴く手段は沢山あるが、レコードは現在の若者にとってもなお気になる音楽ツールである。