外資系メーカー元社長・弁護士 宮崎裕子さんに聞く

記者: Haruka Inami (11)

日本初の女性弁護士をモデルにした現在放送中のNHK連続ドラマ小説『虎に翼』では、主人公たちが女性差別と戦っています。未だ課題が残る社会の中、活躍されている女性弁護士の声を聞きたいと思い、弁護士で、外資系メーカー前社長の宮崎裕子さんに、ジェンダーバイアス*について伺いました。宮崎さんは、仕事の中で直面したジェンダーバイアスの経験を語り、それを克服する方法や、これからの女性の活躍に必要なことについて話してくださいました。

*ジェンダーバイアス:「ジェンダー・バイアス」とは、男女の役割について固定的な観念を持つこと、社会の女性に対する評価や扱いが差別的であることや社会的・経済的実態に関する女性に対する神話を指す。(第二東京弁護士会HP https://niben.jp/niben/iinkai/gender/gender-bias/より)

宮崎さんについて

  宮崎裕子さんは、小さい頃から読書が好きで、中学は陸上部、高校はボート部に所属し、スポーツにも打ち込んできました。スポーツの楽しさは自分で考えて練習方法を工夫し、上手くなることができるところだそうです。大学受験の際、偶然にも推薦で法学部に入学したことで法律の面白さに魅力を感じ、弁護士の道へと進みました。弁護士になってからは、日米の法律事務所で外国企業の日本進出の支援や、企業内で様々な部署の法的サポートなどをされてきて、社会に貢献していると実感できるところがやりがいと話してくださいました。ただ、その中でジェンダーバイアスを感じることもあるそうです。

中学生時代は陸上部だったという(写真提供:宮崎裕子さん)

ジェンダーバイアスの話

記者:宮崎さんが仕事をされてきた中で、ジェンダーバイアスを感じたのはどのような時ですか。

宮崎さん:ジェンダーバイアスで苦労したことが三回ほどあります。

 一回目は、弁護士になろうと決め、法律事務所に入ろうとした時に、電話で「女性は採用しない」と言われたことがありました。その時は非常にショックを受け、こういうことも世の中にあるのだなと初めて実感しました。

 二回目は、「女性でも頑張ります」と採用された法律事務所で、クライアントから「女性の弁護士の先生だからすごく細かく丁寧ですね」と言われたことがありました。別に男性でも女性でも人によると思いますが、その時私は、「女性っていうのは細かく丁寧に仕事をすることを期待されているのだな」と思いました。

 三回目は3Mジャパンの社長になった時に、男性の友人に、「社長になるタイミングがちょうどよかったね」と言われたんです。どういう意味か聞いてみたら、私の息子がちょうど大学に入った年だったから「子育てを気にせずに社長業ができるね」という意味だったんです。でも、男性が社長になったときには、「子どもが大学に入って手が離れていいタイミングだったね」なんて言いませんよね。女性はやっぱり、一番の仕事は子育てをすることと決めつけられているんだなと思いました。

弁護士になったばかりの宮崎裕子さん(写真右)
(写真提供:宮崎裕子さん)

  宮崎さんはジェンダーバイアスに直面したときも、なるべく自分のことを相手に説明するなど、女性としてではなく、自分自身のスキルを伝えるようにしてきたそうです。「相手は、私が女性だからという固定観念を持っていることがありますが、相手にそれは違うと伝えるのではなく、私はこういう人間です、というように心がけています」と宮崎さんは語っていました。

記者:なぜ日本にはジェンダーバイアスがあると言われるのでしょうか?

宮崎さん:ジェンダーバイアスは他の国にもあります。でも、日本は他の国と比べてもとりわけジェンダーバイアスが強いと思います。その理由は、歴史にもあるのではないでしょうか。戦後、日本は「会社」を中心に、つまり「仕事第一」で日本経済を復興させようと頑張ってきました。そのために、「男性は仕事中心で、女性が家庭を守る」という役割を分担してやってきたのでしょう。それより前からもあったと思いますが、戦後の数十年でその考え方が固定化されたと思います。

記者:日本はまだまだ大企業で活躍している女性は少ないと思いますが、どうしたら女性がもっと活躍できると思いますか?

宮崎さん:一つ目は、会社の取り組みが大事です。例えば、産休育休が取りやすい制度や復帰しやすくなる制度の導入といった、会社がする行動です。二つ目は、社会、世の中の取り組みです。男性側も家事を積極的にやるのがおかしくないような社会にするなど、ジェンダーバイアスのような固定観念をなくすための努力をすることも大事です。三つ目は、女性本人の意識変革です。女性がジェンダーバイアスを持っていることもあります。固定観念を自分から無くしていくことで、自分の成長にも繋がると思います。これら三つの方向から取り組む必要があると思います。

  宮崎さんが子育てをしながら仕事をされていたときは、保育士さんや祖母など、色々な人の力を借りたそうです。また、ある程度割り切ることも大切だと話されていました。例えば、仕事をしている時は、仕事のことだけ考える、子どもと遊ぶ時は、子どものことだけ考えるというようにしていたそうです。仕事中に子どものことで心配したり、子どもと遊んでる時に、仕事の事を考えたりということはないように気をつけていたとのことでした。

今後の展望と若い世代へのメッセージ

記者:私は将来どんな仕事をするのかまだイメージが湧きません。やりたいことが見つからない若い世代に向けて、アドバイスをお願いします。

(写真提供:宮崎裕子さん)

宮崎さん:やりたいことが今から決まっている人もいるかもしれません。ですが、そういう人は珍しいと思います。友人から「幸せの4因子」というのを教えてもらったのですが、

人が幸せを感じる四つの因子とは、

  1. 自分がありのままでいること
  2. 何かに感謝をすること
  3. やってみようと思うこと
  4. なんとかなる!と感じること

だそうです。ですから、仕事に就くことをゴールにするのではなく、自分が幸せと感じることを見つけていくのがいいと思います。

記者:宮崎さんがこれから取り組みたいことは何ですか。

宮崎さん: 今までは、外資系企業で働いてきましたが、日本企業では働いたことがありません。日本で生まれて育っているので、今後は日本企業のために役立ちたいと思っています。

記者:弁護士になるには、どのような勉強が必要でしょうか。

宮崎さん:勉強については、みなさん、これから世界の人と仕事をすることもあると思うので英語、そして仕事相手の国の歴史を知ることは大事なので世界史や歴史を学ぶことは大切です。でも、やっぱり学生時代は友達をたくさん作ることだと思います。

 学生時代は友達をいっぱい作ることと、友達一人一人のいいところを見つけることを意識するとよいとアドバイスをいただきました。例えば「この人の話し方っていいな」とか、「この人っていつもメールで『ありがとう』と言うなぁ」とか、 その人のいいところを見つけて真似していくようにしたら、友達とのつながりも強くなっていき、自分のいいところが増えるよとのことでした。


取材後記: 宮崎さんの経験をお聞きして、女性を初めから採用しない企業や、無意識のうちに差別的な言葉を口にする男性の存在を知り、正直腹が立ちました。こういう世界を変えていくためにも、宮崎さんが語られたように、女性が活躍できる社会を作るための積極的な取り組みが必要だと感じました。
また、宮崎さんのアドバイスから、仕事に就くことだけをゴールとするのではなく、自分が感じる幸せとは何かを考えたり、友達のいいところを見つけて真似をすることを意識したりして過ごしていこうと思います。

自己紹介: 最近はYOASOBIの歌を聞くのにハマっています。一番好きな歌は、「祝福」という歌です。去年は「アイドル」で友達とヲタ芸をしました。