小巻亜矢社長にインタビュー

記者:池田真彩 Maaya Ikeda (17)

日本のサブカルチャーは国内外から注目されています。その中でもサンリオのキャラクターたちは最前線に立っているのではないでしょうか。私自身も「推し活」をサンリオピューロランド*で楽しんでいる一人ですが、このブームにとても興味を持ちました。サンリオピューロランドを運営する株式会社サンリオエンターテイメントの小巻亜矢代表取締役社長に「推し活」ブームと今後について取材しました。

*サンリオピューロランド:  1990年に設立された東京都多摩市にあるテーマパーク「サンリオピューロランド」は、ハローキティをはじめとした(株)サンリオのキャラクター達がいっぱいのエンターテイメント施設です。サンリオのビジョンである「One World、 Connecting Smiles.」、一人一人の笑顔を作り出し、幸せの輪を広げていくことによって企業理念である「みんななかよく」の達成を目標にしています。

 今、サンリオピューロランド(以下、ピューロランド)には日本だけでなく様々な国からの観光客が多く訪れています。注目が高まった理由は、政府がクールジャパン戦略の一環で、サブカルチャーを日本の宝として世界中にアピールしたことにより、海外の人にもサンリオのキャラクターが身近になったということが一因として挙げられます。また、SNSでの発信を精力的に行ったことで、「実際にキャラクターに会いたい」というファンの気持ちを高め、国内外の多くの人々の心を掴んだことも理由のひとつです。

小巻亜矢代表取締役社長

推し活ブームのきっかけ

ピューロランドは小さな子どもやファミリー層向けという印象がありましたが、最近は中高生や多くの大人も訪れているようです。来場者の年齢層はどんな感じですか。

小巻社長:ミュージカルを上演したり、ファッションブランドとのコラボグッズを始めたことで大人の女性を含め、今までピューロランドになじみのなかった層にも来場していただけるようになりました。また、インスタ映えを意識した食事を提供したり、キャラクターグッズや館内の装飾も「映え」を意識する等、これまでの印象を変えていく工夫もしてきました。これらのネット上で取り上げてもらえるようなネタをたくさん仕掛けていったことで、10代〜30代のお客様が30%ぐらい増えました。インバウンドの方は15%〜20%ほど、多い時には30%のときもあるぐらい増え、ファミリー層だけではなく、様々な層が来てくださることに成功しました。

推し活の場としてピューロランドの名前が挙がるようになりました。ブームのきっかけなどを教えてください。

小巻社長:はっきりした時期は分かりませんが、昔から「好きなアイドルやキャラクターを応援する」っていう文化はありましたよね。最近は「推し活」という言葉がブランド化し、流行りとなった、というのが私の印象です。「メルヘン工房(ピューロランド内のショップ)」が7年ぐらい前から若い女性に大人気の場所になりました。ファンの熱量がすごく上がってきてると感じた出来事として、メルヘン工房で作る「おなまえホルダー」を自分の名前以外の推しの名前で作ると知ったという話があります。

また、2015年に「ちゃんりお」という自分のアバターをサンリオのキャラクターに似せて作るというサービスを展開した時、自分のアバターではなく「応援しているアイドルグループの全員分作っていいですか」のような声がありました。自分じゃなくて、応援するアイドルのアバターを作るという動きが高まっている、と感じました。自分のだけなら1個ですが、例えば9人のアイドルグループだったら、9個作るわけです。このエピソードはビジネスとしての可能性をものすごく感じました。

来場者数や売り上げに「推し活」ブームの影響が及んでいますか。可能な範囲で教えてください。

小巻社長:私がここに関わる10年前から「メルヘン工房」のグッズの売り上げのトップは推し活グッズなんです。大分県のハーモニーランドでも、推し活を盛り上げる仕掛けをすると、関東圏からお客様がわざわざ足を運んでくれるということがありました。

人気のスポット、社長のお気に入り

インスタグラムで推し活スポットなどを紹介されていますが、リピートしてもらうためにどんな工夫をしてますか。

小巻社長:例えば、七夕の時期だったら「キキ&ララ」を前面にするなど、インスタグラムではシーズン毎に押し出すキャラクターを変えてみるとか、キャラクターのコスチュームはは色々なバリエーションを考えたり、インスタ映えを重視する等の工夫をしてます。

YouTubeでキャラクターの動画を見て、私自身すごく癒やされています。

小巻社長:そうなんですよ、癒されるんですよね。寝る前だったり、ちょっと時間があるときに動画ってつい見ちゃうんですよね。より濃いピューロランドファンになっていただける、という循環がSNSや動画の時代だからできる、という面白い状況です。

様々なキャラクターをモチーフにした可愛らしいブースやフォトスポットが展開されていますが、人気のブースやフォトスポットを教えてください。また、社長のお気に入りはどこですか。

小巻社長:人気なのは、「Kiki&Lala トゥインクリングスタジオ」や4階に設置したたくさんのキャラクターが並んだ大きい熊手です。ここは外国人の方にもすごく人気です。食事はいろんなキャラクターの色のカレーが人気です。1階のパレードの最中に迂回するための通路があって、昔は普通の壁だったんですけど、そこもすごく可愛くデザインしたので人気の場所です。あとは外観です。「レインボーアーチ」はひと目でピューロランドと分かるところなので、私にとって大切な場所です。「フェアリーランドシアター」の中はすごく作りが凝っているので、ぜひ皆さんに知ってもらいたいし、「ディスカバリーシアター」と「メルヘンシアター」の間にあるトイレの内装はすごくかわいいので行ってみてほしいです。

4Fの熊手と記者
© 2024 SANRIO CO., LTD. TOKYO, JAPAN  著作 株式会社サンリオ

いろんな人が楽しめる場所

ターゲット層として大人の女性を意識したという記事を読みました。ピューロランドの推し活ブームを見ても、ターゲット層の拡大に成功したようですが、幅広い層にピューロランドを浸透させるために他にどのようなアプローチをしましたか。何かエピソードがあれば教えてください。

小巻社長:まだ浸透できてないと思っています。世の中的には、まだまだ「ピューロランドって小さい子どもと一緒に行く場所だ」と思われているようです。「いろんな人が楽しめる場所です」と引き続き発信していきたい。昔、「シナモロールのおとこまつり」というのがあって、すぐに完売するほど人気でした。そういうイベントをすると男性も来てくださるのです。イベントでターゲット層を広げるやり方もあれば、SNSなどで常にお客様とのタッチポイントを作る、つまり単発と長期の作戦、両方のやり方があるなと思いました。これからも手を変え品を変え、いろんなことをやっていきたいと思っています。

「みんななかよく」

サンリオの理念である「みんななかよく」を実現するために大切にしていること、社長が大事にしていることや将来の目標は何でしょうか。

小巻社長:「みんななかよく」の実現のため、まずはスタッフに笑顔でいてほしいと思います。もちろん現場は毎日とても大変なんですけれど、研修や朝礼で皆にそれを伝えています。それから、大前提として「自分となかよく」してほしい。自分が笑顔でいることが社会貢献の第一歩だと思うし、そのためには皆が自分の体や心を大切にするというのは大事なことなんです。実はそれについての研究はずっとしてるんですよ。世界中の人が仲良くなるには「自分となかよく、みんなとなかよく、文化となかよく、地球となかよく」がサンリオグループが大切にしている理念です。

将来の目標としては、サンリオに触れる人をもっと増やしたい。お客様にピューロランドに来ていただくということだけではなく、ピューロランドのエッセンスを外に持ち出すっていうことが、これからの私達の課題でもあり、夢でもあります。

記者と小巻社長

取材後記: ピューロランドの大ファンなので、取材ができてすごく嬉しかったし、とても貴重な経験ができたと思っています。いつもは「推し活」をする側でしたが、企業側の話を聞くことができたことで、新たな視点を得られました。幅広い客層を獲得するために色々なことをしているという話がとても興味深かったです。特に、「シナモロールのおとこまつり」はすごく盛り上がって素敵だったろうなと思いました。社長に「何かアイデアない?」と聞かれたので、取材後に考えた案は「アフタヌーンティー作戦」です。ピューロランドというかわいい空間で「サンリオ」と「推し活」がうまくマッチできて、大人の女性の心を掴めそうだと思いました。記者としてファンとしてお話を聞くことができ、とても楽しかったです。これからもピューロランドでの多様な「推し活」を楽しみたいと思います。

自己紹介: 女子校に通う高校2年生。自分の興味を持ったことをとことん突き詰めるのが大好きだ。極端な性格なため偏った考えを持ちがちだが、記者の活動を通していろんなお話を聞いて、視野を広げていければいいなと思っている。文章を書くのには慣れていなくて、今は少しずつでも書いてみようと思って色々なことに挑戦している。自分の興味や疑問にちょっとでも「へぇー!」と思ってくれる人がいたらいいなと思う。