ボランティア活動をする理由と目標

記者:Kim Yeonjung(19)

 厚生労働省の調査によると、路上生活者は年々減少している。しかし、東京都内には4000人以上の路上生活者がいる。今回は路上生活者と社会のつながりを保つ支援をする1つの団体に取材した。
参考:ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)

 炊き出しなど、様々な方法で彼らを支援をしている団体はいくつもある。これら団体の主な目標は、衣食住の支援だったり、自立のための職業支援だったりするが、その中で「スープの会」は少し違ったことを目標にしている。

 「スープの会」は、東京都新宿に事務所をおく市民活動団体だ。毎週欠かさず、新宿駅ターミナル周辺で主に活動を行っている。毎週土曜日の夜7時からスープの会の参加者が集まりスープを路上生活者の方々に配っている団体である。スープの中身は夏は冷たい麦茶、冬は暖かいコーンスープなど季節や日によって中身を変えており、それを楽しみにしている路上生活者もいるという。そして「スープの会」の特徴はスープを配るのが主な目的ではなく、路上生活の方々と会話をして社会とのつながりを保つことを目的としているという点である。路上生活者にも様々な背景があり、話を聴いてほしい人やただ人と話したい人もいる、そんな人たちに寄り添ってスープを飲みながら話をする。

スープの会代表の後藤浩二さん

スープの会のはじまり

「スープの会」ができたのは、1990年代、当時学生だった後藤浩二さん(「スープの会」ソーシャルワーカー)が始めた活動からだった。社会福祉を学んでいた際に当時問題となっていた路上生活者への支援で、どのような思いで路上生活をしているのか知りたかったことがきっかけだった。「炊き出しで食事の支援をする団体は多くあるが、話をして社会とのつながりを保つような団体はまだなかった」と後藤さんは語った。炊き出しではなくゆっくりと話をすることを主にしている中で、当時は「支援が目的ではなく話しかけるのが目的なんて、社会福祉として成り立っていない」という意見も多かったが活動を続けていくうちに参加者が集まり、その日の天気や気温など生活にかかわる些細な出来事も話しているうちに路上生活者の人達も心を開いて話してくれるようになったそうだ。安心できる居場所を彼らとともに作っているのである。

居場所づくりの大切さ

 後藤さんは多くの経験を通じて地域での「居場所づくり」の大切さを実感してきた。そのうちの一つとしてこんな思い出話を私に話してくれた。
 それは「スープの会」として活動をしていた時に出会った一人の男性の話である。後藤さんによると、宇都宮から来た40代前半の男性は最初、世間話だけを話していた。だが、時間をおかずに再びスープの会に訪れてくれた。その時、たまたま児童養護施設でボランティアをやってるスタッフと彼が出会うことがあった。「じつは俺もそういうことをやってみる側に立ちたかったわ」と話してくれた。かつて自身も養護施設で過ごし、そこでボランティア活動をしたいと思ったことがあると、ポツポツと語り出してくれた。スープを配りながら話しかけてきた団体が「スープの会」だった。最初は「(自分は)大丈夫だから」と言って距離を置こうとしていた方も、何度か他愛もない話を繰り返すうちに心を開いてくれた、そんな出来事があったという。

 「生活保護を受けるものはみんな働くことによって自尊感情を持ってきた。しかし他人からダメなやつだというレッテルを貼られがちだ。なにより当事者である本人がほかの誰よりも強く、ダメな人間だと刷り込んでいる場合がある。セルフネグレクト(自己放任)によって自分の殻に閉じこもってしまう。孤独死やゴミ屋敷問題にも繋がっている」と後藤さんは言う。実際に「スープの会」の活動の紹介動画を作った時に路上生活者の方への取材では、彼らが一番最初に発していた言葉は「人生の失敗者だ」という言葉や「自分たちみたいになるなよ」という言葉だったという。

 また「スープの会」は電話での相談や地域生活支援も行っているが、主に知ってほしい活動は路上訪問であると後藤さんは言う。
 路上訪問では新宿駅ターミナル周辺の地上コース、地下コース、そして中央公園コースの3つに分かれて訪問を行う。各訪問コースにはボランティアと話をしたいと思っている路上生活者の方もいて、コースごとに集まる人々の雰囲気や特徴も異なってくることも参加するうえでの楽しみの1つである。また路上訪問をすることによって改めて居場所の必要性や、路上で生活をしている人も社会の中にいる一人であるという認識をすることができるようになる。
 路上生活者の方に社会とのつながりを切らせない支援、今までなかなか見ることができなかった方法で今も多くの路上生活の方のもとに訪問し、話をしている。炊き出し以外での新たな支援の仕方である。

 「スープの会」としての今後の目標は、地域という枠を超えた「居場所づくり」であると後藤さんは語った。それは約29年間、路上生活者の方々と話をしながら居場所を共に作ってきたからこその目標である。


    <取材後記>
     ボランティア活動に関心を持つ人は増えているというデータがある。社会の問題に目を向け、力になろうと行動をすることはいいことである。しかし、「ありがとう」という言葉を言ってもらえることを当たり前だと思っていないだろうか。私たちは誰かから感謝されるためにボランティア活動をしているのだろうか。私たちが無意識に思い込んでいる「支援してあげる」という上下の関係ではなく、一人の人として接してきているからこそ些細なことでも悩みを話すことができるのかもしれない。