飯田奈々(16)

 夫婦別姓選択制に対する平成8年6月の世論調査では、「婚姻をする以上,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり,現在の法律を改める必要はない」と答えた人は39.8%だったが、平成13年5月調査では29.9%に低下した。逆に「夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望している場合には,そのように法律を改めてもかまわない」と答えた人は32.5%から42.1%に上昇した。

 ここから分かるように、国民の夫婦別姓への関心は徐々に高まってきているようだ。そこで、夫婦別姓について賛成派の弁護士である早稲田大学大学院法務研究科教授の榊原富士子氏と会社員で夫婦別姓を名乗るため事実婚をしている渡辺二夫氏、反対派の衆議院議員、亀井静香氏にインタビューした。

榊原富士子弁護士に取材

 榊原氏は夫婦別姓のメリットをこう語る。「まず本人の意に反して自分のアイデンティティの表象である姓を失わずにすむ、結婚・離婚や離婚を都度他人に知らせたくないという人もいるがプライバシーを守る事ができる。次に、姓が変わることにより仕事上で積み重ねてきた実績や信用を失うことがあるが、別姓を選ぶことができればそうした苦労をせずにすむし、働きつづけやすくなり、女性のさらなる社会進出の助けとなる。最後に、夫婦同姓しか選べないと女性が男性の姓に合わせる慣習がいつまでもなくならないが、夫婦別姓が選べれば結婚相手との対等な感じが生まれる。つまり、夫婦の平等の象徴になる」と。

 また、「私達が訴えているのは夫婦別姓選択制であるから、夫婦同姓にしたい人には何も影響がない。つまり、デメリットはない」と渡辺氏は言う。

 一方、国会では鳩山政権のときに夫婦別姓選択制の大合唱であったが、亀井氏が首を縦に振らなかったために、それが実現しなかったという。夫婦の姓問題の第一線で行動してきた亀井氏はこう語る。「夫婦別姓のメリット・デメリット議論以前に、あえてしなくてもいい事をなぜしなければいけないのか分からない。今が便利なのに、それを壊してまで混乱を招くような事への必要性を感じない」と。

亀井静香氏に取材

 2012年5月16日世界保健機関(WHO)は「World Health Statistics 2012(世界保健統計2012)」で、日本の出生率は1.4%でWHO加盟国193カ国中175位であると発表した。少子化により、兄弟姉妹のいない男女の結婚が増えどちらかの“姓”がとだえてしまうという事が多発する。日本では、「個人としての姓だけでなく、夫婦双方の親から受け継いできた姓を残したいという理由から夫婦別姓選択制を求める声も少なくない」と榊原氏は言う。別姓選択制は、結婚奨励策であり、ひいては少子化対策でもある。なんらかの手を打たなければならない時期に来ている。