曽木颯太朗(16歳)

 東京23区では収集区分の変更が行われ、プラスチックごみについては、 2008 年から 順次汚れていない容器包装は資源ごみに、その他は可燃ごみになった。プラスチックを燃やすとダイオキシンが発生すると小学校で習ったせいか、プラスチックを燃やすと聞いてかなり違和感を持ったものだ。おまけに私の住む区では 突然 4 月から 区分が変わったので、しばらくの間ごみを捨てるのに手間取ってしまった。最終処分場を延命させるためだという話を耳にしたが、そのためにプラスチックを燃やして環境に害は無いのだろうか、全部リサイクルできないのか、など様々な疑問が頭に浮かんだ。

 東京 23 区のごみの焼却・破砕(ごみの中間処理)を行う東京 23 区清掃一部事務組合の総務部企画室長の小林正自郎さんと広報・人権係長の石井菜穂子さんにお話を伺った。小林さんによるとプラスチックを不燃ごみとして扱うようになったのは、燃やすことによる汚染物質排出の問題もあったが、なにより生ごみを優先的に焼却する必要があったこともある。さらに、増大一途のプラスチックごみを他のものと共に焼却した場合、発熱量の違いから工場の調子が狂うおそれもあったという。

  しかし、その後の公害防止設備の設置などによって汚染物質の排出は減少した。特にダイオキシン類対策特別措置法の制定後、対策を進めた結果、ダイオキシン類をはじめ汚染物質の排出は国・都の基準を大幅に下回っている。モデル地区で出されたプラスチックを可燃ごみとして焼却しても問題はなかったそうだ。

 今回プラスチックと皮革・ゴム類が不燃ごみ扱いされなくなると不燃ごみは以前の 40% に減り、収集・運搬を集約化できるほか、処分場の寿命も 30 年から 50 年超まで延ばせるという。

 しかしプラスチックにはリサイクルという方法もある。小林さんも「プラスチックはリサイクルすることが前提」とおっしゃっていた。 プラスチック・リサイクルを進めてごみを圧縮できないのだろうか。廃プラスチックの活用方法の研究や広報活動を行っているプラスチック処理促進協会広報部の神谷卓司さんによると、実は材料として再利用するマテリアル・リサイクルだけでなく、焼却すること自体がリサイクルになるのだという。焼却することで電力としてそのエネルギーを回収するこの方法はサーマル・リサイクルと呼ばれている。

 廃プラスチックのうち埋め立ててしまうのは全体の 13% に過ぎず、全体の実に 50% はサーマル・リサイクルで処理されているという。一方で材料化するマテリアル・リサイクルはコストが高く、付着物があると上手く処理できないため、家庭からの廃プラスチックを処理することは難しい。油化・ガス化するケミカル・リサイクルは技術的には完成しているものの、普及は進んでいない。いずれも初めて聞いた話だった。

東京二十三区清掃一部事務組合 小林氏

 いくら工場でダイオキシンが基準を下回っているとはいえ 30 万トンもの不燃ごみが焼却される場合の環境への負荷は分からないという話も聞いた。それでもやはりプラスチックを焼却すること自体がリサイクルでもあるのだから、可燃ごみとして積極的に扱っても構わないだろう。

 一方でどうして廃プラスチックが可燃ごみになるのか最終処分場の延命問題ばかり伝わってきて、エネルギー資源と成りうることはちっとも取り上げられていない。うちのマンションでは区分変更が行われてから丸一月は以前のままで、現在も変更の告示があるだけで以前のように捨てている人もいるようだ。最終処分場の問題だけなら「自分だけなら別に不燃ごみとして捨てても大した量ではない」と以前のまま捨ててしまうことだってあり得る。資源としてプラスチックはどのように利用できるのか、リサイクルの実態を積極的にアピールして各家庭の意識をあげる必要があろう。


プラスチック、可燃ごみで大丈夫?

大久保里香(16)

 今までは不燃ごみとして処分していたプラスチックを現在、可燃ごみとして処分している地域が日本で増えている。東京 23 区でも平成 20 年度 から 順次 可燃ごみとしてプラスチ ックを処分する予定だ。

 そもそもなぜプラスチックを不燃ごみとしてではなく可燃ごみとして処分する地域が増えているのだろうか。理由のひとつが埋め立て量の限界だろう。 プラスチックは不燃ごみ全体の 52 パーセントを占めている。このまま、プラスチックを不燃ごみとして処分し続けると埋め立て地が数十年と待たずにいっぱいになってしまうだろう。しかし、プラスチックを可燃ごみとして処理すると埋め立て量の約 60 パーセントを削減できる。 今まで埋め立てられていたごみの体積を半分以下に抑えることができるのだ。将来を見越すと、プラスチックを可燃ごみとして処分することで埋め立て地が抱えている問題を軽減できるなら画期的な方法かもしれない。

プラスチック処理促進協会 神谷氏

 2 つめの理由が、プラスチックリサイクルの難しさにあるだろう。プラスチックには多くの種類があり、同じ種類のプラスチックだけを多量に集めるのはまず難しい。ペットボトルやトレーなどは一目見ただけで誰でも分別できるので例外的に再び集めたもので製品を作ることができる。あまり知られていないが、プラスチックが資源として回収されても再び製品となるケースは少ないのだ。

 また、プラスチックは塗装がしてあることや、残飯などが付着して回収されることが多いので、仮にプラスチックを再形成してもにおいと色の問題でリサイクルパレットなどの用途に限られてしまう。こういった、製品にはならないプラスチックはエネルギーリサイクルとして活用される。エネルギーリサイクルとはごみなどを燃焼させるときに燃焼効率を上げるために鉄鉱石や石油の代わりに製品としては使えなくなったプラスチックを使うことである。

 取材を受けていただいたプラスチックの処理促進協会の神谷卓司氏は「無理をしてプラスチックを製品として再びリサイクルしようとすると、逆にエネルギーがかかり環境に対して負荷になる。」とおっしゃっていた。プラスチックの可燃ごみ化は環境に対しての不信感を抱く人もいるだろうが、可燃ごみ化もプラスチックの有効なリサイクルといえることは間違いない。また、プラスチックを可燃ごみとして処理することやエネルギーリサイクルをすることは今問題になっている石油の枯渇や資源問題の解決策にもなりうるのだ。これからは、あまり知られていないプラスチックのエネルギーリサイクルも世間に広めていくべきだろう。

 しかし一見、よいことだらけに見えるプラスチックの可燃ごみ化だが、プラスチックを可燃ごみとして処分することで環境への悪影響は本当にないのだろうか。

 取材を受けていただいた 東京二十三区清掃一部事務組合の小林正自郎氏は「公害防止設備が向上し、また国のダイオキシン対策特措法によって平成 14 年 12 月までに清掃工場のダイオキシン対策が義務づけられているので、プラスチックを可燃ごみとして処理をしても環境に有害なガスは出ない。しかし、原則として資源としてリサイクルすることは大切である。」とおっしゃった。 環境の面では、プラスチックの可燃ごみ化は問題ないといえる。しかしながら、プラスチックの可燃ごみ化は日本で統一されているわけではないので、個人が住んでいる地域以外でごみを捨てるときのごみの分別が大変になることは間違いない。ごみの分別の統一化はプラスチックの可燃ごみ化にとってもっとも重大な課題だろう。

 プラスチックの可燃ごみ化は将来の地球を見据えた魅力的な方法であるといえる。しかし、プラスチックをむやみやたらに可燃ごみとして私たちが捨てるのでなく、資源としてリサイクルするか、エネルギーとしてリサイクルするかをしっかり考え、分別することでより一層、環境に優しいシステムが確立されるだろう。


ごみを分別しなくてもいいの?

川口洋平(18)

 「紙は燃えるごみ、プラスチックは燃えないごみに捨てなさい」。

小さい頃からこう言われて育ってきた。しかし東京23区では、プラスチックも燃えるごみになりつつあるそうだ。あれだけ注意されて育ってきた身としては、なんとも奇妙な感覚である。

 東京都でプラスチックが不燃ごみとして扱われ始めたのは、今から約35年前の昭和48年から。大量生産、大量消費の幕開けとも言える高度経済成長の当時、ごみは年々増加し、清掃工場で焼却処理しきれなくなったものはそのまま埋め立てをしていた。その結果、処分場に近い江東区で悪臭やハエの発生という環境被害を招いてしまった。それらの発生原因となっていた生ごみや紙を優先的に焼却処分し始めたのが分別の始まりだ。

 その当時の状況からしてみれば、分別は面倒だが仕方がなく、プラスチックごみは分別してそのまま“埋めるしかなかった”のだ。

 ところが21世紀になり科学技術が飛躍的に進歩した今、プラスチックを燃やしても有害物質が出ない焼却炉に全て入れ替わった。平成11年に国がダイオキシン類対策特別措置法を制定し、清掃工場が排ガス対策するようになったからだ。現在は有害物質そのものを測定できる限界値を下回る工場があるほど、きちんと排ガス、排水、焼却灰について対策がなされている。

 東京都の調査によると、不燃ごみの 57.8% を占める(※1)プラスチック類を焼却処分することで、30年しかないと言われている最終処分場の寿命も50年程度に延びるそうだ。

 プラスチックごみの分別をしなくても良い理由は分かったが、ごみを回収する市区町村によっては、分別をしなくてはいけない地域もある。処分方法を統一することはできないのだろうか。

ごみの焼却などの中間処理を担う、東京都二十三区清掃一部事務組合によると、プラスチック資源化施設の設置、コスト負担の考え方など、各区によって事情が異なり、23区内での収集方法統一は難しいという。

 平成17年に廃プラスチックの収集方法統一を検討した特別区の助役会では「各区事項としてそれぞれの創意工夫により再生利用を推進する」としたまでで、統一をする方向性はないようだ。

 原油高の今、貴重な原油から作られているプラスチックを簡単に焼却処理してしまうことに疑問視する声もある。

 廃プラスチックを適切に処理するための研究開発を行っている社団法人プラスチック処理促進協会によると、ペットボトルなど資源化しやすいものを除き、廃棄物から使えるプラスチックを選定する必要があり、プラスチックの資源化にはコストがかかるという。また、汚れたプラスチックの資源化を無理に行うより、エネルギーとして利用するサーマルリサイクルをするほうが効率がよいともいう。従来は焼却処理をする際に、紙や生ごみだけでは炉の温度が上がらず、炉で燃やすための燃料を投入していたこともあるそうだ。プラスチックは燃やすと高温になるため、炉の温度をあげる燃料の代わりにもなるのだ。

 他の自治体の状況を調べていくうちに、意外にも日本や世界全体で見ると、プラスチックは燃えるごみとして使用され、焼却の際に発生するエネルギーを回収、利用するサーマルリサイクルをしている地域が多いようだ。ごみを新しい製品や材料にする、マテリアルリサイクルが環境に良いように見えるが、目に見える形でリサイクルされることが必ずしも最善とは限らないのだ。

 急に分別がなくなったのは、こういった背景があった。一方で、プラスチックの処分方法は自治体によって異なる。プラスチックごみは、原料として生まれ変わることもあれば、熱エネルギーとして利用されることもある。どちらもきちんとリサイクルされていることには変わらない。

 プラスチックを再資源化する方法が違うということをきちんと広報することが、より効率的な再資源化につながるのではないだろうか。

※1平成18年度清掃工場等搬入先ごみ性状調査報告書より

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