堀 友紀(17)

韓国大衆文化研究家の古家正亨さん

 最近、雑誌やテレビなどで「韓流ブーム」や「K-pop」という言葉をよく耳にし、目にするようになった。急に周りが「韓国!韓国!」と叫ぶようになったように感じる。そこで、K-popとは何なのか?またK-popアイドルとJ-popアイドルとの違いはどこにあるのか?に興味を持った。日本でいち早くK-pop専門番組を立ち上げたことで知られ、日本におけるK-popの第一人者と呼ばれることの多い古家正亨氏にお話を聞いた。

 古家氏によれば、K-popアイドルになるためには、まず所属事務所のオーディションを受ける。日本のオーディションは受かればほぼデビューが確定する。しかし、韓国のオーディションは歌手になる練習生になるための募集だと古家氏は言う。したがってオーディションに受かってもアイドルになれる保証はない。練習生になるためのオーディションでさえ大変な競争率だ。合格したあとはアイドルになるための競争が待っている。韓国でデビューできる人数は年間にわずか10人と言われ、競争倍率は5000倍とも。競争を勝ち抜くために練習、語学学習、顔の整形まで行ってライバルとの差別化を図る。厳しい環境に身を置いている以上努力をしないと勝ち抜いていくことはできない。「この努力が歌もダンスも上手になる一番の秘訣であり、J-popアイドルと最も違う点だ」と古家氏はいう。K-popアイドルは才能があるように見えるが、実際は努力の塊であると古家氏は力強く言った。

 少女時代やKARA、ワンダーガールズといったK-popアイドルはビジュアルを売りとし、ミュージックビデオに力を入れている。今まで韓国では国民簡易番号制といって1人1人に番号の付いているソーシャルセキュリティーカードを持っていないとミュージックビデオにアクセスできないため、見ることもダウンロードすることもできなかった。しかし近年この制度がなくなり、誰もが見られるようになった。このことが日本でK-popアイドルのブームとなった背景にあるという。
 
K-popが日本に進出する理由は、日本の市場規模の大きさにある。世界でいちばん市場規模が大きいのはアメリカ。それに次ぐ2位が日本だ。そして韓国は世界で17位。金額で比較すると、日本の市場規模は韓国の35倍ある。「日本の巨大市場に進出できれば韓国のア―ティストには箔がつく」と古家氏は言う。

 韓国が政府をあげてK-popの日本進出を後押ししているというのは何度も耳にしたことがある。しかし、日本ではそのようなことはあり得ないと古家氏は指摘する。ではなぜ韓国ではそのようなことをするのか?韓国は資源が少ない輸出産業の国であり、電化製品などを作って儲けているが、物を作る産業にも限界がある。そこで文化コンテンツとしてア―ティストが取り上げられているのである。

 日本への進出の著しいK-popアイドルであるが、これに対しJ-pop関係の事務所はどう思っていると思いますか?という問いに、古家氏は、確かにK-popの勢いにJ-pop界は焦ってはいるけれど、でも大丈夫!とどこか安心していると思うと古家氏は言った。過去にJ-pop側がK-popアイドルを受け入れた瞬間があったという。それは、テレビ番組スマスマ(SMAP×SMAP)に東方神起が出た時だ。J-pop界を背負って立つ存在であるジャニーズが東方神起を受け入れざるをえなかったというのだ。それほど東方神起はすごかったのだと古家氏は何度も繰り返し言った。そして、これほどすごいグル―プであり、韓国のエンターテーメントを引っ張ってきた存在である東方神起は分裂騒ぎがあり、今は5人で活動をしていない。それがゆえに分裂は絶対に許せない!と古家氏は悔しさ混じりの顔で言った。 もてはやされるK-pop界。この人気の裏にはアイドル1人1人の血のにじむような努力があった。そして、日本で活躍している外国のアイドルを見て、「努力」というものをJ-popアイドルは見習い、もっともっと活躍の場を広げて欲しいと願う。