三好恵瑠(14歳)

 皆さんは「SGH」という言葉を聞いたことはあるだろうか。SGHとはスーパーグローバルハイスクールの略だ。2014年から文部科学省が実施したグローバルリーダー育成事業のことである。この事業は2014年から5年間実施される。今回は最近よく聞く「グローバル」という言葉からSGHを考えてみる。

 まず、SGHの理解を深めるため、文部科学省に取材した。質問に答えてくれたのは文部科学省初等中等教育局国際教育課計画指導係長の矢田裕美さんだ。グローバルリーダーの育成方法や質の高い教育課程等の開発・実践については、指定された学校側がスーパーグローバルハイスクール事業の趣旨に沿うように計画を立て実践し、文部科学省側は事業の開発・実践やその体制整備を支援する。学校側は自分たちで5年間の構想を立て、文部科学省へ提出し、それを文部科学省が審査して、スーパーグローバルハイスクールとして指定するという仕組みだ。指定された学校は、毎年度計画書を文部科学省へ提出しているという。

文部科学省初等中等教育局国際教育課計画指導係長の矢田裕美さん

 次にSGHの指定校2校に、現場の実情を知るため、東京の渋谷教育学園渋谷中学高等学校(以下渋渋)と青山学院大学付属高等学校(以下青学)へ取材した。渋渋で質問に答えてくれたのは英語科教諭でSGH委員副委員長である北原隆志先生だ。渋渋では学校ごとの目標として「探究型学習を、いかにして行動できるリーダーの育成につなげるか」ということを挙げている。もともと「地球社会で活動できる人材」を育成することを目標としており、SGHに加入する以前からグローバルリーダーを育成する活動は行っていたという。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校

渋渋でSGHに加入してから出来たことは、以前から行っていた教科連携が本格的に出来るようになったことと、文部科学省からお金が出るので東京外国語大学に通う海外の大学院生を呼べるようになり、以前からやっていた内容をより充実させることができるようになったことだという。以前より多くの先生が教科連携に前向きな姿勢を示していたため、SGHはとてもよい機会だったそうだ。

青学で取材に応じ答えてくれたのは英語科教諭の藤井徹也先生だ。青学では学校ごとの目標として「多様性の受容を基盤としたサーヴァバントマインドを持つグローバルリーダーの育成」ということを挙げている。キリスト教系の学校なのでキリスト教の考えかたが基盤となっており、キリスト教のサーヴァバントリーダーという考え方から出来た目標だという。具体的に言えば、立場の弱い人たちと共にいることで集団の下支えの出来るリーダーのことだ。
青学ではSGH加入後、「ポータル」というシステムを利用し自分がやったことを生徒同士がシェア出来るようにするというプロジェクトを文部科学省に提出しているという。SGHの活動は強制参加ではなく、好きなものに好きな時に参加するという仕組みだという。そこで、一人ひとりが違う活動をする中それをお互いにシェアし色々な経験を学ぶことができるようにするそうだ。

青山学院取材

 今回の取材で3つのところへ行き、共通していたことが2つある。それは「グローバル人材とグローバルリーダーの違い」ということと、「英語はツールだ」だ。

 皆さんは普段「グローバルリーダー」という言葉よりも「グローバル人材」という言葉の方をよく聞くのではないかと思う。そこで、二つの違いとは何なのか取材先それぞれで質問してみた。するとグローバル人材についてはそれぞれ微妙に違う見解があったが、グローバルリーダーについては同じ答えが返ってきた。それは「みんなの意見に耳を傾けたうえで自分の意思を決められる、人を導けるリーダー」というものだ。

 そして「グローバル」いう単語を聞いたとき英語をおもいうかべるひとが多いのではないかと思う。しかし、SGHとは前述の通り「様々な国際舞台で人を導けるリーダー」、グローバルリーダーを育成することであり英語教育を充実することではない。でも、世界で人を導くためには「英語はツールとして」必要だという。

 今日、グローバル化が進んでいる社会で日本が生き残るためにはそのなかでリーダーとなれる存在になることが必要だ。そのためのSGHはとてもよい活動なのではないかと思う。しかし、この事業は5年で終了してしまう。この後の生徒たちはどうなるのだろうか。もう少し期間を長くすることはできないのだろうか。事業が終わったとしても学校ごとにこのような活動を続けてほしいと思う。