飯田奈々(16)

 日本は海外からの難民受入れ事業に乗り出すのが、他の先進諸国に比べて遅かった。100%の受入れ体制が整っておらず、改善すべき点は多くあるそうだ。財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部の鈴木功氏、NPO法人難民支援協会広報部の田中志穂氏、NPO法人かながわ難民定住援助協会会長桜井ひろ子氏、事務局長與座徳子氏と、様々な立場の人たちを取材した。

かながわ難民定住援助協会の與座徳子氏への取材

 「難民条約」によると、難民とは「人種・宗教・国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、又は政治的意見を理由に、迫害を受ける可能性があるために祖国から逃れざるを得ない人」のことを指す。難民事業本部によると、2010年に日本政府に難民として認めてもらうために申請した数は1202人であった。

  日本には、認定がありえない外国人 をまずふるいにかけてから段階的に審査していくという制度がない。難民も、単に経済的理由で日本にきた人も申請窓口が同じなので、申請者数が膨らむと 、難民認定審査に一定の時間がかかるようだ。 。難民事業本部の鈴木氏によると、一時は認定されるまでに1 年以上かかっていたが、最近では6ヶ月を切るまでに短縮されたそう だ。

 もう一つ、 鈴木氏があげた事は、不認定などの結果を受けて何回でも申請をし続けることができる点だ。「何回も申請して、認定されることはあるのか」との疑問に対しての答えは、ほとんど「ノー」に近いそうだ。もちろん不認定結果に納得がいかず再度申請する場合も多くあるが、何度も難民認定申請が行われることで、申請者にも負担がかかる場合もあると 言う。

 しかし、難民支援協会の田中氏は、何回も審査できるというのはそれだけ審査方法がきちんとされていない証拠で、制度に問題があり、誰もが納得するようなフェアで透明性がある認定基準の仕組みを作ることが大切だ、と語った。

 このように政府の委託事業を実施している難民事業本部と援助をしているNPOとでは、物事の捉え方が異なっている。しかし、どちらも 「難民に幸せな暮らしを送ってもらえるように」「日本にきてよかったと思ってもらえるように」と最終的な方向性は同じだ。

 また、日本人の難民に対する意識も同じである。総論では、「難民を受け入れるべきだ」「親切にすべきだ」と唱えているが、いざ自分の隣に難民が引っ越してくると拒否する。これではいつまでも、難民を受け入れるのにふさわしい土壌ができず、難民の日本での社会的立場は変わらない。
 
 今後労働人口がどんどん減っていってしまう日本において、「難民定住者や他の外国人定住者が今の日本の生産現場を担っていることを認識しなければならない。そして、日本で生まれ育った難民定住者の子どもたちにとって、二つの文化を併せ持つことが将来的にプラスになるような環境の整備が必要である 」とかながわ難民定住援助協会の桜井氏と與座氏は何度も繰り返した。 最後に桜井氏は語った。「外国人は異文化を運び、一色に染まりがちな日本に多様性をもたらす。困難を乗り越えて生きる難民の姿から、日本人が学ぶ事は多いと思う。難民は人口が減少している日本社会にとって貴重な 人的資源 なのだから」と。