記者:畔田涼(17)

「捨て子台」を設置していた、東京都済生会中央病院乳児院の大庭看護師長へ取材

 熊本の慈恵病院が捨て子の救済を目的に設置した「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」。賛否両論のこの設備の運用が、2007年5月10日開始された。この設備は捨て子を救うために役立っているのか、それとも育児放棄を助長するものになってしまっているのか。また、この設備が全国に広がったらどうなるのか。慈恵病院の蓮田理事長と、現在の「こうのとりのゆりかご」のシステムに近い「捨て子台」を過去に設置していた東京都済生会中央病院の乳児院の大庭看護師長にお話を伺った。

 蓮田理事長は「赤ちゃんの受け入れは、あくまで緊急避難の手段である。相談での解決が望ましい」と全国の自治体の相談窓口の必要性を説く。慈恵病院で行っている24時間無料電話相談には、東京や関西を中心に北海道から沖縄まで全国から相談がくるとのことだ。

 一方、済生会中央病院の大庭看護師長も「こうのとりのゆりかごに、基本的に賛成」と言う。現在、乳児院にはさまざまな理由から赤ちゃんが預けられている。一番多い原因は、母親のうつ病などの病気で、全体の3~4割を占めるとのことだ。

 それでは、「こうのとりのゆりかご」のような設備が全国的に広がったら、中絶が減って捨て子が増えるだろうか。大庭看護師長は「中絶と捨て子の関連性は少ない」と考えている。「それより性教育をきちんとするべき。そうしなければ、根本的に変わらない」と両者は語る。

 私達はこの設備の賛否に関係なく思う。「親には責任のある行動をとってほしい」「児童相談所など相談できる機関がある事を教えてほしい」と。

 「こうのとりのゆりかご」をマスコミが「赤ちゃんポスト」と報じたため、簡単に赤ちゃんを捨てることができる設備といった印象を受けやすい。蓮田理事長の「赤ちゃんの受け入れは、あくまで緊急避難の手段。相談での解決が望ましい」という趣旨を正しく理解せずに、安易な気持ちで出産し、この設備を使用する人がいても、それを阻止することはできない。きちんとした性教育が施されるとともに、こうした本来の趣旨を理解することが必要だと思う。

 「こうのとりのゆりかご」はだれを救うのだろうか。母親、それとも子どもなのか・・・。いずれにしても、私達はこのような設備の必要性がなくなるような社会になることを望んでいる。