星美ホームの取材を通じて

記者:尾崎惺 Satoru Ozaki (17)

 私(記者)はアメリカ留学中に貧困家庭を支えるボランティア活動に参加し、地域での共助文化の大切さを実感したことがある。帰国後、日本で状況としてまずは「公助」の実態はどうなっているだろうかと東京都北区赤羽台にある児童養護施設、星美ホームを取材させてもらった。副施設長の立入聡氏によると、地域住民の協力やボランティアの支えのもと、多様な活動を展開しているそうだ。児童養護施設が、地域全体と協力して子どもたちや保護者を支えている現状について取材した。

 児童福祉の世界は、時代とともに大きく変化してきた。立入氏によると、かつては戦争孤児の保護が主な目的だったが、現在は「保護」から「養育(養護)」へと重点が移行しているという。

 実は正直なところ、取材前は児童養護施設に対してあまりよく知らず、ネカティブなイメージを持っていた。しかし、実際に星美ホームを訪れてみると、その印象は大きく変わった。ここは児童養護施設の中でもスタッフ、建物、設備を含め様々な条件に恵まれており、施設の雰囲気は明るく充実し、子どもたちも楽しそうだった。

 立入氏によると、「児童虐待の報告数は横ばいだが、ニュースでそう言ったことへの注目が増えているため、増えていると錯覚する人は多い」という。また、平成28年の法改正により、23区(特別区)が児童相談所を設置できるようになったそうだ。「区が担当すると、担当者一人あたりの件数が減り、きめ細やかなケアができるようになった」とのことだった。

副施設長の立入聡氏

 施設での生活

 星美ホームは、カトリック団体が運営する児童養護施設だ。現在の定員は94人(2024年7月時点)で、6人を1グループとする小規模グループケアを実施している。立入氏によると、「短期で対処する子供は家庭に戻るパターンがほとんどだが、長期滞在する子供もいる」とのことだった。食事については、幼児のグループやショートステイ(2000円から送迎付きで利用可能)は食事が提供されるがその他は自分で調理が原則だそうだ。朝晩自分でご飯を作らなければいけないが、それ以外は、一般家庭に近い環境だ。高校生には小遣い(6,000-7,000円)も出る。スマートフォンの貸し出しやアルバイトが許可され、塾の費用も国や都から支給があるという。「普通の生活をしてもらうことが方針だ」と立入氏は強調する。もちろん、何かトラブルが起きるケースはある。問題があってスマホを没収するということもあるそうだが、それは一般家庭も同じだろう。

 また、星美ホームでは子供たちの体験を重視しているそうだ。「アウトワードバウンド(Outward Bound)*の考え方をベースに、キャンプや海外ボランティアなどの体験を通じて、信頼関係を築き、レジリエンス**を回復させる」と立入氏は説明してくれた。

 取材中、私はプロのダンサーが子どもたちにダンスを教えるイベントに参加する機会があった。約30人の子ども達が参加し、大人も同じ数か子どもよりも若干多い人数が手伝いに来ていて、とても充実した環境でのレッスンだった。子供達のはしゃぐ姿は、私が小学生の頃に経験したものと変わりなく、むしろそれ以上に楽しそうであった。

*アウトワードバウンド(Outward Bound):アウトワードバウンドとはドイツ発祥の考え方で、様々な野外活動を通して困難を乗り越え自ら成功体験を得る活動の総称であり、”Outward bound”は​​船が出航1日前に掲げる旗を意味する。

**レジリエンス:ここで言うレジリエンスとは心理学で​​回復力や復元力など自発的に治癒する力のことをいう。

スタッフが食事を準備している様子

進学支援と卒業後

 星美ホームでは、18歳以降も措置延長で支援を続け、大学や専門学校への進学を目指させているそうだ。「今は奨学金制度も充実しているし、大学生の学費は公費で対応できる場合が多い」と立入氏は語った。大学進学のための塾の費用も国や都から支給される。

 驚いたことに、この施設では留学プログラムがあり、子どもたちはフィリピンなどに行く機会があるという。また、キャンプをしたり、100名山を巡ったこともあったそうだ。これらの実現には職員の給料の一部を運営費に回すなどして財源を確保しているそうで、さまざまな工夫がされていることを知った。

 「時代の変化は目まぐるしい。『今の施設の子達はいいですね』と言う卒業生もいる。昔は私自身が強い番犬みたいな指導者だったから・・・。今はサポートが本当に充実してますし」と何十年も前の現場では体罰やもっと厳しい指導をしてきたこともあると、振り返りながら立入氏は語ってくれた。ここ10年ほどは退所者のケアもしているそうだ。卒業後、30年経った退所者と飲みに行ったり、近況報告し合うこともあるそうだ。

地域社会との連携

 立入氏は「少子化が進む中、この施設は地域の人々にも還元する時代になっている。例えばショートステイの提供など、困難を抱える人々が利用できる仕組みを整えている」と児童養護施設の役割の変化について教えてくれた。

 特に印象的だったのは、星美ホームでは1週間や2週間の短期預かりを行っている点だ。しかし、一般的には親が子どもを短期間預けることに罪悪感を感じることが多いようで、立入氏は、「子どもの事情を考えるのはもちろんだが、親の事情も理解し、サポートすることが大事だ」と強調した。この「親の事情も理解しよう」という視点は、私にとって新鮮だった。

 私がいたアメリカの高校では貧困家庭のサポートやファンドレイジングが高校のプログラムに組み込まれていた。日本でもそのような文化があれば良いのではないかと思ったこともあるが、日本では格差がアメリカほど大きくはなく、生活保護も整っているので、ボランティアや寄付のニーズが違うかもしれない、と帰国後に考えを変えた。それでも、今回の取材で地域の人が集まって交流を深める場としての星美ホームがある、という一面はこういった施設が公助を超えて共助の文化を広める役割がありそうだとも思った。立入氏は、児童養護施設の役割やニーズは地域によって非常に異なる、と前置きした上で「ここを豊かにして、多くの人に活用してもらって、サービスを利用してもらいたい。この北区は人口が増えている。家事支援やショートステイにニーズがある。貧困問題だけではなく、生活のスタイルの変化に合わせたニーズに対応していきたい」と語った。

 よく「児童保護施設」と聞くと、メディアの影響のせいか、何かシビアな、深刻な社会課題に根付いてそうだ、というような印象を抱いてしまう。しかし、今回の取材で私が目にした光景は、いわゆる一般家庭と相違ない日常であり、子供達の笑顔であった。また星美ホームの公助は共助に繋がり、そしてそれが地域全体のコミュニティー形成につながっていたことは間違いない。その意味でこの施設は”先端”であった。読者がこの記事を読み、もし近くにこのような施設があれば、ボランティアなどでぜひ一度関わりを持ってみようというきっかけになれば幸いである。

*本記事は一部Chat GPTを利用しました。


自己紹介: 私は数ヶ月前に一年間のアメリカ留学から帰国した高校3年生である。米国滞在時にみた日本との違いに興味を持ち、両国を様々な点で比較した取材をしたいと思い、今に至る。現在受験期であり、できれば海外大学に行きたいと思っているが、どうなるかは分からない。